ブロイラーの動物福祉基準について合意(EU)


 EUの農相理事会は5月7日、ブロイラーの飼養方法に関し、新たな動物福祉基準を設定することに合意した。欧州委員会は2005年5月に本基準に関する指令案を提案していたが、各国の意見が対立し、当初の飼養密度に関する基準を緩和するなどしてようやく合意にこぎつけた。

 欧州委員会は、今回の合意がEUにおいて動物福祉の取り組みが改善されるのみならず、鳥の健康やそこから生産される肉の品質向上につながるとしている。

 なお、EUでは、畜種別の飼養方法に関する動物福祉基準は、すでに子牛、豚、採卵鶏に関して設定されており、今回のブロイラーに関する基準はこれに続くものとなる。


各国の意見が対立

 新たなブロイラーの飼養方法に関する動物福祉基準の設定について、これまで各国の立場は大きく異なっていた。

 2005年7月の農相理事会における議論では、ドイツ、スウェーデン、デンマークなどが現行の飼養密度により生じるリスクに対処する欧州委員会の提案を支持した。一方で、スロバキア、チェコ、フランスは、本規則によるEUのブロイラー産業の競争力が低下、またEU域内の市場シェアが低下する可能性があることから加盟国ごとの経済的事情や地理的条件に注意が必要であるとの懸念を表明していた。

 その後、2006年の農相理事会で議論が行われたが、2006年2月以降EU域内で発生した高病原性鳥インフルエンザにより大きな影響を受けているブロイラー生産者に配慮し、フランスを中心に、コスト増につながる指令案について早急に議論を進めるべきではないとして合意が見送られてきた。


飼養密度基準については緩和

 これまでの農相理事会における最も大きな論点は、飼養密度の基準設定であった。これについて、当初、欧州委員会の提案では、ブロイラーの飼養密度を1平方メートル当たり生体30キログラム以下とし、鶏舎内のアンモニア濃度、気温や湿度などの一定の条件を満たす場合は、ブロイラーの飼養密度を同38キログラム以下まで認めることとしていた。

 しかし、本基準を厳しいとする加盟国との妥協案として、最終的には、ブロイラーの飼養密度を同33キログラムまで緩和し、また、鶏舎内のアンモニア濃度などの一定の条件を満たす場合の密度を、同39キログラム以下まで緩和することとした。さらに、飼養農家が鶏舎に導入し、肥育後出荷するブロイラー群について、7回連続で致死率が3%以下であることや過去2年間に動物福祉に関する違反がないことなどを条件に、さらにプラス3キログラムの緩和を認める特例も導入されることとなり、最大で同42キログラムで飼養することが可能となった。

 また、当初の提案では、本基準を適用しない範囲を、ブロイラーの飼養羽数が100羽未満の飼養農家、種鶏場、ふ化場としていたが、その範囲を広げ、500羽未満の農家などに適用しないこととした。


新たに設定される飼養基準

 飼養方法に関する基準として、例えば、鳥が休息を取るための消灯時間、常に新鮮な敷料の準備、適切な換気などに関する基準が設定されている。

 また、重度の傷がある、または健康状態が悪い鳥については、適切な治療または迅速なとうたを行うこととしている。


管理者に対する義務

 動物福祉基準の履行については、飼養者の能力に負う部分が大きいことから、大規模飼養者については、動物福祉に関する訓練の受講と資格の取得が義務付けられる。また、すべての鳥について、健康上の問題などが見られないか最低1日2回の監視を行うことや、鶏舎内の気温や湿度、実施した治療内容、毎日の死亡鳥の数などの健康に関する記録をつけることが義務化される。

 今後、本指令が適用されれば、各加盟国は2010年6月30日までに、本指令の実行に必要な法令を制定し、施行しなければならないこととなっている。


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