主要かんがい農業地域における水不足が深刻化(豪州)


最悪の場合、農業用水の割当ては全量中止。政府は追加支援を検討

  豪州のハワード首相は4月19日、豪州の主要かんがい農業地域であるマレー・ダーリング集水域において、今後、6〜8週間以内に十分な降雨がない場合、今年7月から同地域におけるほとんどの農業用かんがい用水の割当てを中止する可能性があるとの意向を表明した。同地域は、豪州におけるかんがい農業の75%を、豪州全体の農業産出額の約34%を占める。

 同地域では、今年2〜3月に平年並みに近い降水量があったものの、依然として水不足の状況が続いている。特に2007年2〜3月の同地域への水流入量は過去最低を記録し、集水域の水量はかつてないほどの低水準となっている。このため、同地域の水資源は、都市・農村地域住民および家畜の飲料水として優先的に割り当てられ、その結果、ほとんどの農業用水への割当が全く無くなる可能性が出てきた。

 また、同首相は、現在の状況について「前例のない危険な状況」としており、政府として、早急に追加支援措置を講じる意向を表明した。現在、連邦政府は、干ばつ対策として指定地域の農家などに対し所得補償や利子補給といった支援措置を講じており、支援額は過去最高の水準となっている(海外駐在員情報通巻第764号参照)。

 さらに同首相は、連邦政府が今年1月に提案した100億5千万豪ドル(約9,950億円:1豪ドル=99円)に及ぶ水資源確保のための全国計画(同通巻第753号参照)に関し、唯一同意していないビクトリア(VIC)州に対し、早急に同意するよう働きかけた。


SA州など各州で水不足対策を実施

 マレー・ダーリング集水域における水不足問題については2006年11月7日、連邦政府、ニューサウスウェールズ州、VIC州および南オーストラリア(SA)州首脳が会し、サミットが開催された。そこで、緊急時の都市部への水供給計画(2007〜08年)を早急に検討すべきであるとの要請が行われた。これに基づき、専門調査会は2006年12月、最初のレポートを作成し、2006年の同地域への水流入量が記録的に少なかったこと、また、関連地域における水資源確保対策の必要性などを提言した。同地域に大量の都市部住民用飲料水を依存しているSA州では、水資源の有効利用を図るため、湿原地域への水路を閉鎖するなどの対策が講じられている。

 今回の同首相の表明は、4月に取りまとめられた2回目のレポート結果に基づき行われたものである。このレポートにおける主な指摘は次の通りである。

・2006年6月からのマレー川への水の流入量は60%以上の減少

・2007年3月末のマレー水域の水位は過去最低で、4月も継続の見込み

・2007年の水流入量は2006年に続き低水準の見込み

・政府は、水不足に対するさらなる対策が必要


今後の農業生産に長期的な影響を及ぼす恐れ

 農業用水の割当てが中止された場合、全生乳生産量の44%を占める酪農のほか綿花、米およびブドウといった園芸作物などの生産に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。特にブドウ、かんきつ類など多年性作物については、一度作物が枯死してしまうと、再度、作物が収穫できるまでには長期間(数年)を要することから、生産や経営面において深刻な影響が及ぶことが指摘されている。また、これに伴い、農産物価格が上昇することも懸念されている。同地域における主な農作物の生産量の全体に占める比率は次の通り。



元のページに戻る