干ばつ時の牛肉などの小売価格は適正と報告(豪州)


干ばつの影響に伴い牛肉・羊肉の原料と製品に価格差

 豪州自由競争消費者委員会(ACCC)は2月15日、干ばつ時の牛肉・羊肉の国内小売価格は、適正な競争原理の下、形成されているという調査結果を公表した。豪州では、干ばつの影響により、昨年後半、肉牛・肉羊の市場価格が大幅に下落したが、国内の牛肉・羊肉小売価格は、記録的な高値のまま推移した。このため、豪州農漁林業省マクゴラン大臣が2006年11月28日、ACCCに対し、牛肉・羊肉の小売価格が適正に形成されているかどうかについて調査を依頼していたものである。


肉牛・肉羊の市場価格の変動が牛肉・羊肉小売価格に反映されず

 豪州では、干ばつの影響により、出荷頭数、特に品質の劣る家畜が増加したことから、2006年10月の東部地区若齢牛指標価格(EYCI)が267豪セント/キログラム(枝肉重量ベース、約256円:1豪ドル=96円)となり、同年8月(382豪セント/キログラム(約367円))から、約30%下落。その後、やや価格が回復したものの、同年12月初旬には再び低水準となった。同様に、2007年11月のトレード・ラム(豪州国内でおもに消費される規格のラム)指標価格は260豪セント/キログラム(約250円)で、同年7月(389豪セント/キログラム(約373円))から約33%下落した。

 一方、小売価格について見ると、2006年7〜9月の牛肉・子牛肉およびラム・マトンは、いずれも記録的な高水準であったが、家畜市場における干ばつの影響が顕著となった同年10〜12月において、それぞれ1.87%および0.69%の下落にとどまり、家畜市場価格の変動が食肉小売価格に反映されなかった。


家畜市場価格の下落は複雑な流通過程で相殺

 ACCCは調査の結果、こうした家畜市場価格と食肉小売価格の関連性が小さいことについて、牛肉・羊肉が消費者に届くまでの流通過程が長く複雑であることを挙げている。このため、食肉小売価格に占める家畜市場価格の割合は低く、経費の一部にすぎないとしている。特に、この干ばつでは、牧草の生育状況が不良であり、また、飼料価格が2006年の間に約2倍に急騰したことから、飼料費の増加が家畜市場を通じて導入した素畜などの価格の下落の影響をある程度相殺したとしている。


家畜市場を経由しない家畜の直接供給契約が増加

 また、ACCCは、小売業者において、安定的な仕入れや価格変動リスクを回避するため、生産者(フィードロット業者)と直接、肉牛・肉羊供給契約を締結する取引方法の増加を挙げている。こういった取引方法は、家畜市場を経由しないため、家畜市場の価格変動が直接的に小売業者の仕入れ価格に影響を及ぼさない。

 国内牛肉・ラム小売の約半分を占める大手2大スーパーマーケットでは、すべての肉牛をこの方法で仕入れており、また、肉羊についても同様の取引形態が増加している。また、こういった取引が増加する背景として、小売業者では自ら定めた仕様に合致した高品質な牛肉・羊肉のみを扱うこととしているが、家畜市場では、この基準を満たす肉牛・肉羊を十分に手当てできない事情もあるとしている。


小規模かつ分化された国内市場で、不当な小売価格の形成・維持は困難と結論

 豪州では、牛肉・羊肉生産量の多くは輸出に仕向けられるため、大手スーパーマーケットであっても、流通量全体に占める取扱比率は小さい。また、国内市場は、外食、食品加工および小売に分類され、さらに小売は、スーパーマーケットと専門小売店に分かれている。このように、小規模かつ分化された国内市場において、一部の業者が不当に高い小売価格を形成し維持することは困難な状況であると、ACCCは結論付けている。


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