米国の畜産団体、下院農業委で飼料価格高騰への懸念を表明


飼料価格の高騰による畜産業への影響を検討

 3月8日、米国の下院農業委員会畜産物小委員会は、飼料価格の高騰が畜産業に与える影響について検討するため、公聴会を開催した。

 開会に先立ち、レオナルド・ボスウェル小委員長(民主・アイオワ。同州は全米一のトウモロコシ、肉豚および鶏卵の生産地。)は、飼料価格の高騰が畜産業界だけでなく最終的には消費者にとっての問題となる可能性があるとした上で、畜産業界とエネルギー業界の双方が十分な穀物を入手できるよう、公聴会での意見を踏まえて有効な解決策を検討していきたいとした。

 また、ロビン・ヘイズ議員(共和・ノースカロライナ。同州は移入飼料を利用した垂直統合型の企業的大規模養豚で知られる。)は、地元の支持者をはじめとする多くの生産者から畜産経営は飼料価格の動向に左右されると聞いており、この公聴会は飼料価格の高騰による悪影響について話を聞く良い機会であるとした。


政府は飼料価格の高止まりによる畜産物の生産縮小と消費者価格の上昇を予測

 公聴会には、行政府からチャック・コナー農務副長官が出席し、飼料価格の今後の動向と、畜産物需給および価格の見通しについて説明を行った。

 同副長官は、トウモロコシの1ブッシェル当たり平均農家販売価格が2006/07作物年度(2006年9月〜2007年8月末)の3.20ドル(トン当たり15,000円:1ドル=119円)から2007/08年度には3.60ドル(同16,900円)に上昇し、2010年までの間3.50ドル(同16,400円)を下回ることはないだろうと予測した。

 また、国内消費の増加と輸出市場の拡大により畜産物の需要は堅調に推移しているが、飼料価格の高騰により生産費が増大する一方、畜産物の価格は直ちには上昇しないことから、すべての畜種で畜産経営の収益性が悪化するだろうとした。

 さらに、畜産経営の収益性悪化により、やがて畜産物の生産は減少し、結果的に消費者価格が上昇していくことになるだろうとの見通しを示した。


生産者団体は飼料コストが大幅に増大している状況を強調

 これに対し、生産者側は、全国豚肉生産者協議会(NPPC)、全国肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全国鶏肉協議会(NCC)、デイリー・ファーマーズ・アメリカ(DFA:米国最大の生乳販売農協)など、主要畜産部門を代表する6団体が意見を表明した。

 このうち、NPPCのフィリッピ前会長は、輸入原油への依存度を低下させようという政策は支持するが、トウモロコシを原料とするエタノール生産の急増に伴い畜産部門に予定外の悪影響が生じているとし、飼料価格の上昇により肉豚の生産費は昨年に比べ30%増大している(飼料費は35ドルから65ドルに増加)とした。

 また、NCBAを代表して発言したテキサス州の育成牛・肥育牛生産者は、過去10年間にわたり米国産トウモロコシの最大の顧客は畜産業界であったとした上で、今年に入りトウモロコシの購入価格は昨年の価格を92%も上回っており、仮に農務省予測の通りトウモロコシのエタノール仕向け量が前年比50%も増加するようなことがあれば、国内の全肉用牛農家の懐勘定にそのまま響いてくることになるとした。


エタノール生産に対する助成措置の廃止が論点に

 米国のエタノール産業は、51セント/ガロン(約16円/リットル)の租税減免措置と、54セント/ガロン(約17円/リットル)の輸入関税により保護されている。これらの助成措置はおのおの2010年末、2008年末に終期を迎えるが、畜産団体はトウモロコシ価格の高騰を防ぐため、その延長に強く反対する意向を表明している。

 また、米国の耕地の約1割は土壌保全事業(CRP)の補助金を受けた休耕地となっているが、畜産団体はこれらのうち環境への悪影響が軽度な土地については、違約金なしで事業からの離脱を認め、再び穀物の生産を行えるようにすることを提案している。

 このほか、エタノールの製造の際に副産物として生産される蒸留かすの飼料価値を高めるための研究開発や、牧草や木材などセルロースを原料とするエタノール製造の実用化を推進するための取り組みに対し、政府が支援するよう求めている。


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