欧州食品安全機関(EFSA)は7月23日、公表されている文献などによれば、これまでの実験においては、遺伝子組み換え(GM)飼料を給与した家畜の組織やその畜産物などにおいて、飼料由来の組み換え遺伝子やたんぱく質は検出されていないとの結論を取りまとめ公表した。
GM飼料給与家畜に由来する畜産物に対する表示を求める動き
EUにおいては、GM作物およびこれを含む食品・飼料については、GM作物を含む旨の表示をしなければならない。一方、GM飼料を給与した家畜から生産される肉、乳、卵についての表示ルールは特に定められていない。
本年2月、環境保護団体はGM飼料を給与した家畜から生産される食肉などの畜産物についても表示を求め、欧州委員会のキプリアヌ委員(保健担当)に対し100万人の署名とともに請願を行った。
これを受けた欧州委員会は、GM飼料を摂取した家畜において、その組み換え遺伝子やたんぱく質が、家畜の組織や乳・卵などの生産物に組み込まれる可能性について関心を持った。このため、欧州委員会は本年3月、リスク分析・評価機関であるEFSAに対し、この可能性に関する意見を求めていた。
文献調査における収集対象項目および結論
これを受け、EFSAでは、GM飼料の組み換え遺伝子およびたんぱく質に関し、以下の点を中心にこれまで公表された文献を収集した。
・飼料調製過程における変化
・家畜消化器官内における変化
・家畜が消化・吸収してそのまま組織に取り込まれる可能性
・組み換え遺伝子やたんぱく質が家畜の組織に取り込まれた場合、それが生物学的機能を発現する可能性
これらの文献の結果から、EFSAは、以下の結論を取りまとめた。
・通常、活性遺伝子やたんぱく質は食品や飼料の成分としてさまざまな量で含まれているが、これらは、摂取後、消化器官においてすぐに分解される。
・これまでの広範な研究結果においては、GM飼料の組み換え遺伝子およびたんぱく質が、牛、豚、ブロイラー、ウズラなどの家畜の組織・血液などや家畜から生産される乳・卵などから検出されていない。
なお、本件には直接関係はしないものの、人間の消化器官内における植物中の組み換え遺伝子の変化に関する文献についても収集しており、GM大豆摂取の実験において、人間の消化器官に組み換え遺伝子は組み込まれないとの結果を紹介している。
表示のあり方についてはリスク管理機関で判断
これらは、あくまでEFSAによる科学的な知見の収集とその結論をまとめたものである。GM飼料を給与した家畜から生産される肉、乳、卵における表示のあり方については、次の段階として、リスク管理機関である欧州委員会などが今回の結論も参考にして判断を行うこととなる。
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