今年に入り、北部6省市でPRRSが発生
ベトナムで豚繁殖・呼吸器障害症候群(PRRS)の発生が最初に確認されたのは97年とされているが、今年に入ってからは3月中旬に同国紅河デルタ地方のハイズン省において発生が確認されている。その後、北部の首都ハノイ市を含む5省市でPRRSの発生が報告されたため、農業農村開発省(MARD)は関係省市に対し感染拡大を阻止するよう指示していた。なお、ハイズン省を含む北部6省市におけるPRRSの被害は約3万頭とされている。
PRRSの被害が拡大
しかし、6月下旬以降、同国中部地方のクアンナム省、クアンガーイ省、トュアティエン・フエ省およびダナン市においてもPRRSの発生が報告されている。これらの4省市のうち、被害が最も大きいのがクアンナム省で、既に約2万7千頭以上の豚の死亡が確認されるとともに、1千頭以上の豚が殺処分されている。このため、同省政府は疾病管理の徹底を図るため、ワクチンを25万ドース手配するとともに、豚の殺処分に係る補償金として1キログラム当たり1万ドン(70円:1,000ドン=7円)を支給する方針を決定した。なお、政府に対しては、PRRS撲滅に係る費用として100億ドン(約7千万円)の予算を要求している。
現地を視察したMARD大臣は、関係省市に対して豚および豚肉の移動制限の強化や消毒などPRRS拡大防止に向けた迅速な対応を要求したほか、マスメディアなどを活用した注意喚起を促している。さらに、PRRS撲滅に係る費用として250億ドン(1億7,500万円)の支出を決定したとしている。
同国南部のホーチミン市家畜衛生局は、中部でもPRRSの被害が報告されたことに伴い、同地域からの豚および豚肉の移動を制限した。同局によれば、PRRSの発生以降、同市には毎日6〜7千頭の豚が外部から輸送されたとしており、同市近郊の農場において検査を実施するとともに、検疫を受けていない豚はすべてとうたするとしている。
AI清浄化宣言後のAI再発
また、同国では、鳥インフルエンザ(AI)の発生も引き続き確認されている。AIについては、今年2月下旬に南部メコンデルタ地方のカマウ省、バクリュウ省で発生が確認されて以来、AI感染地域は拡大を続け同国全土に広まった。MARDは、6月に全国18省市においてAIの感染が確認されたと公表したが、その後は3週間以上AIの発生が確認されていないことを理由に清浄化宣言を行っている地域も多く、8月27日現在で直近の発生から3週間が経過していないのは、北部のカオバン省、タイグエン省、南部のドンタップ省、チャービン省の4省とされている。このうち、南部のドンタップ省については、いったんはAI清浄化が宣言されたものの、7月下旬に同省内の農場でニワトリ400羽のAI感染が確認された。同地域のニワトリについては、AI予防のワクチン接種が実施されていたことから、MARDも事態を重視し、関係機関に対しAI再発に係る報告書の提出を求めている。しかし、衛生当局が170羽のサンプリング検査を実施したところ、H5N1ウィルスの抗体が見つからなかったことから、ワクチン接種そのものが実施されていない可能性も示唆されており、同国のAI対策に対する信頼性も揺らぎ始めている。
また、同国保健省によれば、本年5月以降ヒトへのAI感染事例は7件報告されており、うち4名が死亡したとしている。これで、同国におけるAI感染死亡例は累計で46人目となった。同国では、2004年から2005年にかけてヒトへのAI感染が多発したが、その後、今年の5月までヒトへの感染は報告されていなかった。 |