修正された鶏肉の祝祭シーズン統制価格(マレーシア)


祝祭シーズンの食料品の価格統制制度

 イスラム教徒のマレー系、中国系、ヒンズー教徒のインド系といった多民族で構成されるマレーシアには、それぞれの宗教の暦に基づき祭日が設定されている。2007年の暦では、2月18日、19日が中国正月、10月13日、14日が9月に始まるイスラム教徒のラマダン(断食)明けの大祭、11月8日がヒンズー教徒の祭典となっている。

 祝祭シーズンには食料品の需要が高まるため、不正に価格を引き上げる業者が現れないよう、同国の国内取引・消費者行政省(MDTCA)は、1946年物価統制法に基づき特定の食料品について祝祭シーズンの上限価格を定めるとともに価格監視を行っており、違反者には罰金や懲役といった罰則がある。また、2006年までは小売価格にのみ上限価格が設定されていたが、2007年の中国正月から、卸売価格にも上限価格が設定されている。


9月からの祝祭シーズンの鶏肉監視価格は実施直前に修正

 MDTCAは2007年9月5日、17品目の食料品について、9月13日〜10月20日、11月1日〜15日の祝祭シーズンに適用される上限価格を発表した。上限価格は輸送コストなどを勘案して地域別に定められるが、全品目数のうち約50%は2006年と同程度、約26%は上昇、24%で下落と設定された。このうち鶏肉(標準品、脚、頭、内臓付き)については、首都クアラルンプールを含む半島部での小売価格は1キログラム当たり5.6リンギ(約193円:1リンギ=34.4円)とされた。これは、2007年2月の中国正月の1キログラム当たり5.4リンギ(約186円)に比べると3.7%の上昇だが、前年同期の1キログラム当たり6.0リンギ(約206円)に比べると6.7%下落している。

 この発表を受けて、マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)は、この上限価格では昨今の飼料価格の高騰による生産コストの増加を補えず、養鶏業界が大打撃を受けるとして、6,000戸の養鶏農家を代表して国内取引・消費者行政大臣に対して上限価格を見直すよう書簡を送った。また、市場では、卸売価格がキログラム当たり5.5リンギ(約189円)程度であることを理由に、6.2〜6.5リンギ(約213〜224円)で販売されていた。

 こうした状況を踏まえ、MDTCAは価格監視の前日である9月12日、農業・農業関連産業省獣医サービス局と生産コストについて検討した結果、鶏肉の上限価格を6.0リンギに戻すと発表した。

 また、価格監視はどうしても小売価格中心になることから、MDTCAは、卸売業者の上限価格(5.4リンギ(約186円))の順守を図るため、鶏肉の取引に当たっては領収証を作成し、卸売業者が上限価格を順守しない場合は通報するように呼び掛けた。


上限価格による価格統制には限界があるとの声も

 MDTCAは、上限価格を定めた品目については、祝祭シーズン中の価格上昇や需給の混乱はなかったとし、海外駐在員情報通巻第778で報じた輸入牛肉(水牛肉)の不足も見られなかったとしている。しかしながら、消費者団体からは、鶏肉の価格統制品目が丸どりだけであり、スーパーマーケットなどで売られているモモ肉やムネ肉、手羽といった部分肉は対象となっておらず、小売価格の上昇が見られることから、こうした部分肉も対象として欲しいとの声がある。また、価格統制品目ではない乳製品や小麦粉などの品目については小売価格が上昇しており、上限価格による価格統制の限界を指摘する声もある。


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