中国、主要農畜産物の供給確保を2008年の重点政策に


養豚・酪農生産への集中的な取り組みなど2007年の活動を総括

 中国の農業・農村政策の枠組みが決定される中央農村工作会議が、2007年12月22〜23日の2日間にわたり、中国国務院と中国共産党中央委員会(以下「党中委」)により北京で開催された。

 同会議に先立ち、胡錦濤中国共産党総書記(兼国家首席)および温家宝国務院総理が、国内の食糧(中国では穀物、豆類およびイモ類をいう。以下同じ)安定供給の確保や農民の持続的かつ早期の増収達成の促進に向けた指示を与えるなど、農業・農村のさらなる発展に向け、中国政府と党中委が今回の会議を非常に重視していることがうかがえる。

 同会議では、科学的発展観に基づく中国の特徴ある農業の現代化路線など、農業・農村発展に対する基本思想を強調し、2007年の農業・農村活動について以下の通り総括した。

1 農業政策に対する中央財政の強化
 2007年は、肥料調合や動物防疫、農民育成および食糧生産の奨励などに、中央財政から513億6千3百万元(約8,013億円:1元=15.6円)の各種補助金を投入し、政策の確実な実施に対する監督・指導を強化した。

2 養豚、油糧および酪農生産への集中的な取り組み
 母豚の適切な保護および増頭と子豚の補充の加速化により養豚の大規模化を促進するとともに、油糧作物のは種面積の回復に力を入れ、2007年の秋〜冬季おける油糧作物のは種面積は、前年比1,050万畝(約70万ヘクタール:1畝(ムー)=15分の1ヘクタール)に達した。このほか、優良乳牛および後継牛の補充に対する補助も実施された。

3 自然災害に対する備えと救済、重大な動植物感染症に対する防御
 各級政府の農業部門は災害に対する備えを十分に行い、災害による損失を最小限に抑えるとともに、重大な動植物感染症に対する防疫活動に努め、動物の疾病追跡システムを構築した。また、動植物の感染症に対する防御と治療を積極的に推進した。

4 農業科学技術の発展推進
 現代農業の産業的技術体系の構築を積極的に推進し、農業に対する科学技術の導入をさらに進展させるための研究などを強化するとともに、農業機械の普及を加速化し、先進技術の応用を促進した。

5 農業管理体制の改革および農業の法制整備の推進
 獣医学分野、農業技術、種子の管理体制および農村金融などの改革と農業保険の試験導入を積極的に推進するとともに、新たな動物防疫法の確実な実施および農民専業合作社法の発展など法律・法規の普及啓もうに努め、農薬管理に関する規則や規範文書の公布・実施などによる規範化を促進した。


主要農産物の供給確保など6項目を2008年の重点政策に

 同会議では、現在の農業・農村には重大かつ深刻な変化が現れ、新たな状況・新たな矛盾・新たな問題が数多く発生しているとし、「農業振興、農村の経済成長、農民の増収および負担減」のいわゆる三農問題解決の緊急性が増していることが強調された。そして、農業の基盤強化と発展、農民の増収、農産物供給の基本的保証、農業のインフラ強化、農業分野における科学技術およびサービス体系の支援強化などに向け、2008年の重点取組事項として以下の6項目が挙げられた。

1 効果的な農業政策の強化と農業・農村に対する支援・補助の大幅な増加

2 食糧、食肉、鶏卵、野菜など主要農畜産物の供給の基本的確保と農民の増収の積極的な促進

3 農業のインフラ整備(水利、土壌改良など)の強化と農業の生産条件改善(機械化、動植物防疫、森林・草原および水土の保持、農地の汚染防止など)の加速化

4 農業分野における科学技術の進展および農村における人材育成の強化、農業の産業的経営による市場への主体的関与の強化および農村部の情報化など社会的サービスの発展

5 農村部における社会事業の発展(義務教育の無償提供、医療制度に対する支援、最低生活保証制度の強化など)とインフラ整備(上水道、電力、交通など)の強化

6 農地の経営権の流動化など農村部における基本的な経営制度の安定・充実と不断の農村改革


4年連続の食糧増産、農業部は食糧安全保障に引き続き警鐘

 同会議では、2007年の食糧生産が4年連続の増産となり、総生産量は5億トンを超える見込みであることが報告された。

 しかし、中国ではここ最近、洪水や干ばつ、あるいは病虫害など自然災害による食糧生産への影響が増加してきているとも指摘されている。国家洪水干害防止総指揮部(総指揮:回良玉国務院副総理)によると、2007年における全国の農作物の干ばつ被害面積は5億9千9百万畝(約3,993万ヘクタール)に及び、干ばつによる食糧損失量は3,736万トン(食糧総生産量の7%強)と見込まれ、最近10年間で最も深刻なものであるとされる。

 また、水利部の関係者によると、同年の水害による農作物の被害面積は、1億8千万畝(1千2百万ヘクタール)と見積もられている。

 こうしたことに加え、生産資材や労働費の上昇など食糧生産コストの増加により、補助金による農家への生産刺激効果が低下してきているといわれる。さらに、国際的な食糧価格の高騰に加え、原油価格の高騰および中国などの鉄鋼需要の増加による船舶のひっ迫などから国際海上輸送費も高水準で推移しており、4年連続の増産にもかかわらず、中国の食糧需給は必ずしも安泰とはいえない状況にある。

 このため、孫政才農業部長は、2008年においても、中国の食糧安全保障に対する警鐘を鳴らし続ける必要があると指摘し、農業基盤の強化を図ることが緊急の課題であり、そのためにも三農問題の解決が最も重要な使命であると強調している。


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