国連食糧農業機関(FAO)が11月7日に公表した「食料需給見通し(Food Outlook)」によると、2008年の小麦価格は、2007年の世界の小麦生産に回復が見込まれること(前年度比1.1%増)から、価格は2008年の半ば向けて弱含みに推移する一方、同年のトウモロコシ価格については、米国のエタノールの価格が弱含みで推移しているものの需給のひっ迫感が解消されないことから、前年の価格水準を上回る水準で強含みに推移すると見通している。
FAOによると、エタノール生産がトウモロコシ価格に与える影響については、トウモロコシ価格高騰の一因になってはいるが、エタノール生産が原因でトウモロコシ価格を高騰させたという直接的な見方ではなく、トウモロコシ価格の高騰は諸々の要因による連鎖の結果であるというとらえ方をしている。また、2007年の穀物(シリアル)生産量が記録的となる一方、需給がひっ迫していることについては、過去2カ年間にわたって生産量が減少したことにより、在庫が取り崩されたためとしている。
粗粒穀物の在庫率はわずかながら改善に
粗粒穀物価格は高騰しているが、2007/08年度(7月〜翌年6月)の貿易量はトウモロコシとソルガムが拡大することで増加(前年度比1.6%増)するとしている。特にEUでは、気候変動により小麦などの生産量が減少しているため、飼料用小麦と大麦の代替品としてトウモロコシとソルガムの輸入量の増加が著しい。
世界における2007年の粗粒穀物の在庫率は、主として米国のトウモロコシ在庫の増加から改善され、前年から1.7ポイント上昇して17.0%が見込まれている。
世界の粗粒穀物需給
2008年のトウモロコシ価格は強含みに
シカゴ商品取引所(CBOT)の先物価格(米ドル/トン)を見ると、小麦市場では2008年7月渡し価格(248)が3月渡し価格(307)を下回っていることから、FAOは、2007年の小麦生産量の回復が織り込み済みで、小麦価格は2008年の半ばに向けて弱含みに推移するものと見通している。一方、トウモロコシ市場については、2008年の価格水準が2007年を上回っており、また、2008年7月渡し価格(160)は3月渡し価格(153)を上回っている。FAOはこのことから、市場では米国のエタノール価格が弱含みで推移することが織り込み済みであるが、需給のひっ迫感が解消されないことから、前年の価格水準を上回る水準で強含みに推移するものと解している。
エタノール価格の動きは、生産者の作付け選択におけるかく乱要因の一つになっており、大豆の作付け決定に影響を与えているとしている。
輸送コスト高も頭痛の種
燃料費の上昇や輸送量の増加、港湾施設での混雑、輸送ルートの延長などにより、輸送コストは記録的に上昇しており、輸入価格に占める輸送コストの比率が必然的に高くなっている。このため、自国により近い供給国へ調達先を変更することで、輸送コストの削減が行われ始めている。
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