ブラジルの牛の衛生管理についてほぼ満足いくものと評価(EU)


 EU食品獣医局(FVO)は11月8日、本年3月に実施したブラジルの口蹄疫管理や個体識別制度など家畜衛生管理に関する現地調査の報告書を公表した。

 今回の調査では、EUへの牛肉の主要輸出先国であるブラジルにおいて2005年後半に口蹄疫が発生した際に、本来、EUへの輸出衛生基準に違反する疑似患畜由来の牛肉などが輸出されたことから、その後のブラジルの牛を中心とした家畜衛生管理の実施状況を調査・評価している。

 報告書では、調査したほとんどの分野で、ブラジル政府の対応はおおむね満足のいくものであると結論付けている。


FVOがブラジルの口蹄疫管理および家畜個体識別制度を中心に現地調査

 現在、EUは、ブラジルにおける口蹄疫発生後も、口蹄疫の清浄化が確認されている州や地域からは引き続き牛肉を輸入しており、MLC(イギリス食肉家畜委員会)によれば本年1〜9月の同国からEU向けの牛肉輸出量は15万トンにもおよぶ。

 このような状況から、EUの要求する衛生基準にのっとった牛肉のみが輸出される体制が整えられているかを確認するため、

・口蹄疫の発生状況および管理状況
・ブラジル政府による口蹄疫ワクチンの管理プログラムの実施状況
・牛、豚、羊など口蹄疫に感染する全畜種に対するサーベイランスの実施状況
・牛個体識別、トレーサビリティ制度の実施状況
・EUの要求する生体牛および牛肉に対する衛生証明の実施状況

を中心に調査が実施された。


ブラジルはEUの要求する輸出衛生基準に対応済み

 報告書では、口蹄疫の管理状況、ワクチンの管理プログラム、牛個体識別の制度などについて、全般的に改善が見られると評価する一方、ブラジル政府に対し、ワクチン接種プログラムのさらなる改善、EU向けに輸出可能な牛飼養施設における飼養基準の順守の徹底、EUの輸入牛肉に要求する表示の徹底など25項目の改善すべき点を指摘している。

 ただし、報告書の最後の注意書きでは、報告書の取りまとめ途中の段階で、すでにブラジル政府が改善すべき点について対応済みであることも併せて記述されていることから、現時点でEUの要求する衛生管理基準はすべて満たされていると考えられる。


アイルランド、イギリスなどの畜産関係者がブラジル産牛肉の輸入停止を主張

 アイルランドおよびイギリスの生産者団体は、本年5月にブラジルにおいて牛の飼養管理の実態などを現地調査している。その結果、個体識別やトレーサビリティ制度が厳密に運用されておらず、EUの消費者の健康にリスクを与える恐れがあるとして、7月には、同国産牛肉の輸入停止を欧州議会で主張している。

 ただし、この5月の生産者団体の調査結果の信頼性に対し、欧州委員会担当部局およびFVOは自らの多数の現地調査の結果を基に疑義を呈しており、牛肉輸入停止を実施するには当たらないとの見解を示している。11月には、FVOによる現地調査が再度実施されており、この結果と併せて、今後のEU側の対応が決定されるものと見られている。


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