インフォーマ・エコノミックス社は11月15〜16日、「農畜産物需給観測会議」を開催し、主要農畜産物の短期的な需給見通しを公表した。今回は、その需給見通しの中から、2007年に入り高止まりする飼料穀物価格の影響などを中心に、2008年の生乳・牛肉・豚肉の生産予測の概要を報告する。
酪農経営は乳価の上昇により当面の間収益を確保する見込み
生産者乳価は、本年3月以降毎月、前年同月を大幅に上回る水準で推移している。生乳生産コストの指標となる生乳/飼料比(生乳1ポンド当たりの販売収入で購入可能な酪農向け飼料の重量)は、本年7月、2006年初頭以来久方ぶりに3.00水準を上回り、その後4カ月連続でこの水準を維持している。
米国の酪農経営は、この比率が2.50水準を下回った場合、赤字経営に転落するとされているが、2007年初頭以降、乳価が飼料コストを上回る速度で上昇したことから、黒字経営を確保しているとされている。また、生産コストは地域によって違いはあるものの、飼料の確保の点で優位性のあるコーンベルト地域を筆頭に、すべての主要な生産地域を通じて、収益性の改善が見られるとしている。
一方、昨年来の飼料・エネルギーコストの上昇により、酪農経営の損益分岐点価格は、生乳100ポンド当たり2.50〜3.00ドル(1キログラム当たり6.1円〜7.3円:1ドル=111円)程度上昇している。今後、クラス3乳価(連邦ミルク・マーケティング・オーダー(FMMO)制度におけるチーズ・ホエイ向け乳価)の低下に伴う生産者乳価の下落が見込まれるため、生乳/飼料比は、2008年中頃まで、2.50〜3.00の水準へ低下するものの、酪農経営は、当面の間、一定水準の収益を確保するものとしている。
2008年の生乳生産量は、飼料コスト高やr-BST(合成牛成長ホルモン)の使用率低下などの影響により、1頭当たり乳量の伸びが鈍化するものの、西部地域を中心とする乳牛飼養頭数の増加などにより、前年を2%程度上回るものと見込まれている。
干ばつ・飼料コスト高の影響により肉牛生産は伸び悩み
歴史的に米国の牛飼養頭数は、約10年のサイクルで増減を繰り返している。2004年に底を打ったキャトルサイクルは、繁殖経営の収益性の向上などにより、2005年以降上昇局面に転じ、2007年当初の牛飼養頭数は、2004年当初を2%超上回る9,700万頭に達した。
しかし、飼養頭数の内訳を見ると、2007年当初の繁殖雌牛飼養頭数は、2004年当初とほぼ同水準となっている。これは、2006年のテキサス州を中心とした干ばつの影響により、繁殖雌牛の規模縮小が余儀なくされた結果である。また、今夏の米南東部における干ばつの影響や、2006年秋以降の飼料コスト高により、飼養頭数の規模拡大は抑制されている。このようなことから、2006年の子牛生産頭数、また、2007年当初の肉用更新用未経産牛の飼養頭数は伸び悩んでいるとしている。
さらに、カナダ産生体牛の輸入条件の緩和措置が、11月19日以降実施されることとなったが(現行の30カ月齢未満の輸入条件を99年3月以降に生まれたものに引き上げ)、近年のカナダにおける乳牛向け食肉処理場の新設や、最近のカナダドル高傾向により、大幅な生体牛の輸入増は見込み難く、2008年の肉牛供給は、さらにひっ迫するものと見込まれている。
2008年の牛肉生産量は、と畜頭数が前年よりわずかに減少(前年比0.4%減)するものの、1頭当たりの枝肉重量の増加(前年比0.4%増)などにより、前年とほぼ同水準(前年比0.5%増の264億ポンド)になるものと見込まれている。
養豚経営は今夏以降の生産増による肉豚・豚肉価格の低迷により収益性が悪化
2007年上半期の豚肉生産量は、サーコウィルスの発生などにより、前年同期をわずかに上回る水準(前年同期比1.8%増)にとどまった。このため、同期の肥育豚・豚肉卸売価格は、前年を上回る水準で推移し、養豚経営者は、飼料コスト高にもかかわらず、収益を確保してきたとしている。
しかし、本年7月以降の生産量は毎月、前年同月を3〜7%程度上回って推移し、第4四半期では、前年同期を約8%上回るものと見込まれている。また、豚肉生産量の増大に伴い、肥育豚・豚肉価格はともに下落基調に転じており、この結果、現在、米国の養豚経営は、2003年末以来となる赤字経営に直面しているとされている。
2008年の豚肉生産量は、サーコウィルスワクチンの普及、また、本年、伸び悩んでいる豚肉輸出は、中国向けなどを中心に増大することから(前年比9%増)、本年を3%程度上回るもの(225億ポンド)とされる一方、肥育豚・豚肉価格は、2007年の水準をさらに100ポンド当たり4ドル(1キログラム当たり9.8円)程度下回って推移するものと見込まれている。 |