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【シドニー駐在員 石橋 隆 12月6日発】 90年代に入って乳製品の国際 需給が好転するとともに、輸出に依存するニュージーランド酪農は順調な拡大路 線を歩んできた。この5年間で酪農家戸数は、減少傾向からわずかであるが増加 に転じたのを始め、経産牛頭数は22%増、1戸当たりの飼養頭数も21%増の 199頭に達した。 90年代半ばにかけて乳製品の国際市況が好調に推移したことから、輸出に依 存するニュージーランド酪農は強く刺激され、この5年間に急速な拡大を遂げて きた。95/96年度の酪農家戸数は14,736戸、5年前の90/91年度 と比較するとわずかに増加した。酪農家戸数は、90年代当初まで一貫して減少 したが、90年代半ばにかけて収益性の向上がみられ増加に転じた。この背景に は、経営環境の厳しい肉牛や羊経営から酪農への経営転換が大きな要因の一つと して挙げられる。 一方、95/96年度の経産牛頭数は、293万6千頭、5年前と比較し22 %増加した。特に、ここ数年は乳価上昇など生産環境に恵まれたことから年率3 〜5%増と安定した伸びを示している。このような経産牛頭数の増加は、主に 酪農家の積極的な規模拡大によってもたらされている。 95/96年度の1戸当たりの経産牛頭数は199頭に達し、5年前の164 頭から実に21%も増加している。これは、日本(29頭)の6.9倍、豪州 (132頭)の1.5倍に相当する。 飼養規模別では100〜199頭層の酪農経営が主体を成し、全体の約半数を 占める一方、300頭以上の酪農家も2千戸を超え全体の14%と、5年前の 6.5%から増加している。 これを地域別にみると、伝統的な酪農地帯である北島が190頭に対し、新興 酪農地帯の南島が264頭と大規模化が進んでいる。その主な要因は、人口が多 く酪農場価格の高騰が著しい北島に比べ、南島では比較的安価に農地を取得でき るため規模拡大が容易なこと、また、将来の酪農好況を見込んだ新規参入者が、 南島で大規模経営を開始するケースもみられるためと考えられる。 このような急速な規模拡大を可能にしたのは、ニュージーランド酪農が放牧主 体により設備投資、投下労働力などを最小限に押さえた生産構造を成しているこ とも一因と考えられる。 しかしながら、農地価格の高騰が今後の規模拡大の障害となりつつある他、環 境問題、搾乳施設の充実なども、今後新たな課題となることも予想される。 <ニュージーランド酪農の5年間の変化> 年 度 酪農家戸数 経産牛頭数 飼養規模 90/91年度 14,685戸 2,402千頭 164頭/戸 95/96年度 14,736 2,936 199 増加率 0.3% +22.2% 21.3%
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