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【シンガポール駐在員 末國 富雄 12月5日発】 フィリピン農業省は、今 年上半期の農業経済レポートを公表した。11月下旬のAPEC総会を成功裏に 終了したフィリピンは、着実な経済発展の過程にあるといわれており、95年か ら96年にかけての実質経済成長率は5%程度とさらに上昇している。農業分野 においても需要拡大が著しい畜産分野を中心に着実な成長が見られる。 フィリピン経済は91、92年と政治的な混乱によって成長が一時的に止まっ たが、93年2.1%(以下実質ベース)、94年4.3%、95年4.8%と着 実な回復途上にある。さらに96年上半期では5.0%(前年同期比)の増加と なった。産業別に見ると、農林水産業が3.7%、鉱工業が5.9%、サービス産 業が5.1%である。 農業省の経済レポート(林業は含んでいない)によると、今年上半期の農業生 産額は2,581億ペソ(約1兆円)、実質ベースで前年同期比3.9%の増加 となっている。この額は日本の農業生産額のほぼ5分の1の大きさに相当する。 内訳を下表に示したが、このうち畜産はブロイラー部門での急激な伸びから3分 野の中では最も高い伸びを示している。 部 門 生産額(億ペソ) 増加率(%) 耕 種 1,552 5.3 畜 産 619 7.1 水 産 410 2.7 計 2,581 3.9 畜産分野では、養豚が肥育豚の供給拡大によって生産増加となった。原因は、 95年12月以降の豚肉価格高騰である。牛肉は、肥育素牛の輸入増加によって 生産を拡大した。一方で、山羊、水牛、酪農は生産が減少している。特に酪農は、 粉乳や練乳の輸入が定着しており、国内生産が発展しにくい環境となっている。 家きん部門は、農業生産額の8分の1を占めており、ほぼ養豚と同じ生産規模 となっている。増加が著しいのは、従来のような市場で処理しながら販売するの ではなく、と畜場で一括処理されたブロイラーである。流通分野においても分業 化が徐々に進みつつあるといえる。ブロイラーは、畜産物中で最大の伸びを示し ている。 品 目 生産量(千トン) 増加率(%) 牛 肉 117 11.5 水牛肉 47 -3.4 豚 肉 601 3.5 鶏 肉 387 13.2 生 乳 6 -5.0 鶏 卵 102 -1.3 また、トウモロコシは、家畜飼料としての利用は半分程度であるが、好天に恵 まれたことの他に改良種子や肥料の投入によって生産を12%向上(前年同期比) させている。 フィリピン農業省は議会報告を目的にこの経済レポートを年2回作成している。 昨年の報告書によると、農業分野の伸び率が1%、畜産は3%、トウモロコシも 不作であった。今年の報告書は、農業生産の着実な向上を反映してか、分量も多 く、数多くの説明が挿入されている。
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