LIPC WEEKLY
農務省、CRPの早期契約終了を許可
【デンバー駐在員 堀口 明 2月1日発】 農務省(USDA)は、現在の穀
物需給の現状などを勘案して、土壌保全保留計画(CRP)により休耕地となっ
ている農地のうち、96年9月に契約が終了するものについて、時期を繰り上げ
て契約を終了し、農産物生産などに向けることができるようにすると発表した。
CRPは、85年農業法により制定され、90年農業法においても継続された、
環境保全を主目的とした農地の休耕助成制度である。86年3月の第1回契約か
ら、92年6月の第12回契約まで、約3,640万エーカーの農地が休耕して
おり、生産者には、休耕の代償として助成金が支払われている。契約対象農地は、
土壌流失の恐れがあるなど、保全対策の必要な農地であるが、CRP事業の終了
後は、かなりの部分が再度農地に転換され、農産物生産などに向けられるとみら
れる。
今回、USDAが、時期を繰り上げて契約の終了を行うことができるとしたの
は、96年9月末に契約が終了する契約対象地の、約1,530万エーカーのう
ち、土壌流出危険度の低いものに限られている。また、契約を終了し、農産物生
産や採草・放牧などの利用を行うに当たっては、事前に、当該農地の保全計画や
採草・放牧実施計画の承認を受ける必要があるとされている。昨年、1度だけの
特例として、生産者にCRP契約終了の機会が与えられた際、休耕地における農
業生産再開に当たっての保全遵守基準が通常の農地における保全基準よりかなり
厳しく、契約終了を希望する生産者が非常に少なかったという事情もあり、今回
の処置においては、保全基準を緩和し、応募しやすいように改められている。
USDAのCRP事業担当局は、100万エーカー程度の休耕地の契約終了が行
われるものと予測している。
グリックマン農務長官は、この発表に際し、「今回の処置は、@生産者が、価
格の高騰している農産物の市況に対応し、作付け面積を拡大できる、A需要に対
応した穀物供給を図るというUSDAの責任に合致する、B土壌流出の危険性が
少なく、比較的生産性の高い休耕地を契約終了の対象としており、環境保全目的
を確保しつつ、効率的な事業実施を行うとするクリントン政権の考え方に合致す
る」との見解を述べている。なお、USDAが新規にCRP契約を結ぶ権限は
95年末で失効しているため、同農務長官は、繰り上げ契約終了を行いつつも、
保全の必要度がより高い農地については、新たに契約し、環境保全を図る必要が
あるとして、議会に対しこれを実施するために必要な新しい法律の制定を促して
いる。
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