LIPC WEEKLY
【ブラッセル駐在員 東郷 行雄 6月20日発】 EUでは、豚の飼育方法な どについて、動物愛護の面から各種のガイドラインが設けられている。このガイ ドラインに基づき加盟国が定める国内規則は各国の裁量に任せられており、基準 の設定が加盟国によって異なるものも見受けられる。 EUにおける豚の飼育に係るガイドラインは、「豚の愛護のための最低基準に 関する理事会指令91/630」として、 91年1月に制定された。この指令に基づき各加盟国は、94年1月までに国内 での実施規則を導入している。 各加盟国の国内規則のうち、ドイツとオランダの例をみてみると、幾つかの項 目について異なった基準が設けられている。 1.豚舎の環境基準 EU指令では、豚舎の空気循環、温度、湿度といった環境基準について、豚に 対し“無害であること”という表現による規定しか設けられていないが、オラン ダはEU指令をそのまま採用しているのに対し、ドイツでは、豚房の環境基準に ついて、温度(例えば、生後10日目までの子豚の場合は最低30度の温度が必 要)やガス濃度(例えば、1立方メートル当たりの最高アンモニア濃度は20cc) などの基準が設けられており、必然的にコストアップの要因となっている。 2.照明 最も一般的な基準であるが、オランダでは、施設内の照度が最低12ルクス求 められているのに対し、ドイツでは最低50ルクスが必要であり、照明のコスト だけで、ドイツはオランダの4倍以上の負担増になっている。 3.床面積 豚1頭当たりの最低床面積は、次のような基準が設けられている。(単位:u) 体重区分 EU オランダ ドイツ <10kg 0.15 0.30 0.20 10-20kg 0.20 0.30 0.20 20-30kg 0.30 0.30 0.30 30-50kg 0.40 0.50 0.40 50-85kg 0.55 0.60 0.55 85-110kg 0.65 0.70 0.65 110-150kg 1.00 1.00 1.00 150kg< 1.00 1.00 1.60 4.繁殖豚の放し飼い ドイツだけに定められている規則であるが、繁殖豚に対して、1繁殖期間にお いて、少なくとも4週間の放し飼いを行うことが求められている。 このように、各国の国内規則は、それぞれの国の関心事項を強く反映できる余地 をもっており、より厳しい基準の設定はその国の養豚農家に対しさらなるコスト 負担を強いることになる。 EU委員会は、97年10月1日までに現行のガイドラインに対するEU科学 獣医委員会の専門家による意見を取りまとめ、理事会に報告することとなってい るが、動物愛護と経済性、各国の思惑が今後どう調和してゆくのか注目される。
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