LIPC WEEKLY

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苦悩する豪州フィードロット産業



【シドニー駐在員 鈴木 稔 6月21日発】 牛肉市況の悪化、飼料穀物高に

苦しむ豪州フィードロット産業は、飼養頭数も減少し、また、複数の大型フィー

ドロットが閉鎖に追い込まれているが、さらに、干ばつなどによる飼料穀物不足

時への対応策として政府に求めてきた輸入穀物の未処理国内輸送もその手段が閉

ざされ、八方ふさがりの状態となっている。



 対日輸出を中心に拡大してきた豪州のフィードロット産業も、昨年来の日本市

場を舞台とした米国との競争激化、豪ドル高、飼料穀物高から厳しい時代を迎え

ている。



  今年1月から5月までの豪州産牛肉の対日輸出(船積み)数量は、全体では約

12万9千トンと前年同期比0.5%増となっているが、グレインフェッド牛肉

は6.4%の減少となっている。



 特に、グレインフェッドはチルド輸出が主力となっているが、チルドだけでみ

ると11.8%もの大幅減となっている。



 今年に入り急落してきた肉牛価格も、グラスフェッドは6月は下げ止まり傾向

がうかがえるが、短期(100日)グレインフェッドは依然低下が続き、最近で

は1月より35%程度低い水準となっている。



 このような市況を反映し、フィードロットでの飼養頭数も減少傾向にあり、3

月末の飼養頭数は約43万5千頭と昨年12月末より5.8%減少し、6月末に

はさらに7.9%減少し、約40万頭になると見込まれ、最盛期には収容能力の

9割近くあった飼養頭数が、ほぼ5割の水準まで低下している。

また、最近になり収容規模1万頭以上の大型フィードロット3カ所の閉鎖という

ニュースも流れ、飼養頭数の減少はさらに加速する気配が強まっている。



 このように、豪州フィードロット産業にとって最近の状況は非常に厳しいが、

さらに、一昨年の大干ばつによる飼料穀物不足を契機として、「有事」対応策と

して関係者が1年半にわたり連邦政府に求めてきた未処理の輸入穀物の国内輸送

も、その実現は不可能となってしまった。



 未処理の輸入穀物の国内輸送については、昨年4月に連邦政府が策定したガイ

ドラインの防疫上の安全性確認トライアル(輸送試験)を経て、実現の予定だっ

た。



 このトライアルは、1月の開始早々に問題点が生じ中断され、その後、4月に

再開の予定であったが、再開前にアンダーソン第一次産業大臣が、防疫上のリス

クが大きいことから断念すべきと発言し、トライアルへの政府支援も打ち切った。

先ごろ、トライアル再開の最終決断権を有する評価パネルも「断念」を決定し、

未処理輸入穀物の国内輸送の手段は完全に閉ざされた。

最大のライバルである米国のフィードロット産業も飼料高、生産過剰による価格

低迷で経営環境は厳しくなってきているが、規模、体力ともに劣る豪州フィード

ロット産業にとって、今が最大の試練の時となっている。


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