LIPC WEEKLY
【シンガポール特派員 山田 理 9月5日発】 タイでは、国内需要の高まり を受けて大豆ミールの輸入が増加しており、関税割当数量83万トンのうち、既 に60万トンが輸入されたと見込まれている。こうした中で、飼料業界は、政府 に対し、飼料原料の関税割当枠の拡大を強く要求している。飼料価格の高騰、ひ いては鶏肉価格の高騰につながる問題だけに、政府の対応が注目されている。 タイ飼料生産者協会は、政府に対し、大豆ミールなどの飼料原料の関税割当枠 の拡大を強く要求している。 タイでは、飼料原料のうち、トウモロコシについては、国内生産が比較的多く、 毎年、輸入しながらも同時に、他国へ輸出している。 一方、大豆ミールは、以前から国内生産が少なく、慢性的な不足から、多くを 輸入に依存している。 タイ商務省が、昨年末に定めた今年の飼料原料の関税割当数量は、大豆ミール が83万トン、トウモロコシが5万5千トンとなっている。しかしながら、現段 階で、既に60万トン以上の大豆ミールが輸入されたと見込まれている。 関税割当数量の決定にあっては、国内需要が高まっていることから、養豚や養 鶏、飼料業界などが、大幅な数量の拡大を強く求めていた。国内農業の保護の立 場も捨てきれない政府としては、ぎりぎりの線として、今年の大豆ミールの関税 割当数量を、前年の55万トンから約5割増の83万トンと決定した経緯がある。 当初は、この関税割当数量の拡大が、国内の飼料価格の沈静化を図るだけでな く、適正価格を超えて価格が下落するのではないかと懸念されていた。 しかし、大豆の国内生産は、昨年の大洪水の影響から完全に立ち直っておらず、 生産が伸び悩んでいる。その一方で、国内の鶏肉や豚肉などの消費拡大を受けて、 飼料用を中心として大豆ミールの国内需要は、ますます拡大している。 さらに、今年前半からの飼料穀物の国際価格の高騰が、国内価格の上昇を伴っ た輸入量の拡大という状況を生みだした。 ブロイラー用の飼料価格は、今年始めから徐々に上昇している。国内鶏肉価格 も、今年前半輸出が不振であったにもかかわらず、ここにきて上昇傾向をはっき り示している。 大豆ミールの一次関税率は15%であるが、二次関税率は119%と非常に高 く設定されている。このままでは、二次関税による輸入を行う必要が生じること は明白であり、二次関税率を適用された高い大豆ミールの流通が、国内の飼料価 格の高騰や鶏肉価格の高騰をもたらすのは避けられない事態となっている。 このような中で、政府は、昨年同様、関税割当数量の拡大や二次関税率の大幅 引き下げなどの措置を取らざるを得ない状況に追い込まれており、その対応が注 目されている。
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