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【シドニー駐在員 鈴木 稔 3月26日発】 3月18日に、アンダーソン第一 次産業大臣が発表した食肉関係団体(特殊法人)の再編案は、大方の関係者の期 待を裏切る形のものとなったが、これに対する批判が続出し、今後の組織体制の 細部調整は難航が予想される。 今回発表された政府案の中で、食肉関係者から最も大きな批判、非難を浴びた 点は、豪州食肉畜産公社(AMLC)および食肉研究公社(MRC)の業務を引 き継ぐ組織を生産者が所有する単一組織とした点である。ほとんどの関係団体は、 タスクフォースレポートでも最も支持の多い組織形態の選択肢であった、牛と羊 の畜種別組織の設置を強く推してきた。 アンダーソン大臣自身は、昨年末の段階で単一組織支持の意向を表明していた が、畜種別組織を支持する各団体からの反発を招き、これが、今年1月末とみら れていた連邦政府案の発表を大幅に遅らせる要因となった。 大臣は、政府案発表時の声明の中で、共同の研究開発による相乗効果、畜種別 とした場合生じる各種の活動の重複を避けることによってもたらされる財政面そ の他の効率化などを勘案し、熟慮の上で単一組織を決断したと述べているが、土 壇場で大臣の「ひじ鉄」を食らった格好となった各団体は、一様に失望、怒りを あらわにしている。 また、政府案では、生産者組織とは別に、加工サイド等が自主的にセクター別 の組織を設置し、生産者組織と「友好的提携関係」の下、協調して活動を実施す るとしているが、特に、運営原資となる課徴金を、生産者へは強制賦課、加工業 者は任意とした点は生産者サイドからの反発を招いている。 大臣は、このような形態とした理由を、基本的に課徴金制度は、それを望むも のには適用し、望まないものには適用しないという方針の下、これまでの協議を 通じ、大方の生産者は前者、加工業者は後者であったこと、加工サイドからは研 究開発、マーケティングなど、自己のニーズにより直接的に取り組みたいなどの 意向が示されたためとしている。また、法律上、加工業者等の課徴金支払い義務 規定は残し(ただし、金額をゼロとして実質的に支払いを免除)、不測の事態に 備え、将来の再賦課の可能性を留保するとしている。 しかしながら、生産者サイドは、加工サイドも含めた産業界全体への課徴金の 強制賦課との前提の下で、自らも受け入れるとの立場であると主張している。 生産と加工は利害が一致しない分野も多く、このような産業セクター別のアプ ローチが効率的に機能するかどうか、多くの関係関係者が懸念を表明している。 既に、豪州の食肉加工業者の95%をカバーする団体である豪州食肉協議会は、 政府案を歓迎し、加工サイドも組織を設置し、食品の安全性、品質保証、格付け などの生産、加工サイド双方に必要性のある分野では生産者組織に協力していく ことを表明しているが、日本におけるオージービーフキャンペーンのような包括 的な販売促進活動には関与していかないことも示唆している。 いずれにしても、畜種別、産業セクター別、さらには地域別にも関係者の思惑 は大きく異なり、それぞれの利益確保のため、今後の細部調整の段階で、激しい 議論と画策がなされることとなろう。
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