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豪州畜産、酪農は好況、肉牛は低迷


 【シドニー駐在員 鈴木 稔 2月7日発】 豪州農業資源経済局(ABARE)
が主催する、第27回農業観測会議が2月4日〜6日の3日間、首都キャンベラ
で開催された。畜産分野は、肉牛と羊産業が低迷にあえぐ一方で、酪農が引き続
き好況を維持するという、明暗が分かれた見通しとなった。

 農業観測会議は、毎年2月初旬に開かれるが、経済情勢、農業・貿易政策、気
象条件などを総合的に勘案した上で、主要な農産物の需給、貿易などについて短
中期的な見通しを示すものである。

 農産物輸出大国として、豪州国内の農業関係者のこの会議に寄せる関心は高く、
また会議の一部は国営テレビ局を通じて全国放映される。

 畜産分野では、肉牛産業は、主要輸出市場での低迷から、肉牛価格は、96/97
年度(7月〜6月)は前年度より12%の低下と見通されている。前年度の水準
自体、94/95年度に比較して15%低いことから、厳しさが増してきていると言
える。現在の厳しい市況の最大の要因は、米国の生産拡大であるが、97年も米
国の牛肉生産が高水準で推移すると予想されることから、このような価格見通し
となっている。

  価格、輸出の低迷から、肉牛農家の経営環境はさらに厳しさを増し、農業利益
は3万6千ドル余りの赤字という、過去19年間で最悪の状況と見通されている。

 しかし、来年以降、米国の生産減とアジア市場での牛肉需要の拡大から市況は
改善すると見通され、中期的には、アジアの牛肉需要が豪州の肉牛価格の動向を
左右するものと予想されている。

 一方、酪農は90年台に入り、好調な酪農品の国際市況に支えられて急速な拡
大を続け、生乳生産量は毎年史上最高を記録しているが、中期的にもその展望は
明るいものとなっている。

 96/97年度は、酪農品の国際価格の低下から加工原料乳価は約12%の低下が
見込まれているが、生産量の拡大(前年度比5.5%増の92億リットル)などに
より、農家の現金収入は1%増の6万7千ドルとなり、農業利益も他の畜産分野
が軒並み大幅な赤字となっている中で1万5千ドルの黒字と見通されている。

  豪州畜産の見通しは、中期的には濃淡の差こそあれ、(連邦政府見通しという
こともあり)一応明るい展望となっているが、短期的には明暗がはっきり分かれ
たものとなった。

                          農家の経営収支の見通し                         
       (年 度)    94/95   95/96   96/97 
  肉 牛 :農家現金収入      28,197ドル      10,730ドル     12,500ドル
       農業利益      ▲15,232        ▲22,450        ▲36,300
  羊ー肉牛:農家現金収入      29,695          13,190          27,800
       農業利益      ▲20,272        ▲19,480        ▲17,400
  酪 農 :農家現金収入      49,130          66,600          67,000
       農業利益      ▲ 4,140          16,800          15,000  

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