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USDA、パッカーの事業活動の制限を検討


 【デンバー駐在員 堀口 明 1月15日発】 西部地域の牧場主・農家や中小
企業経営者などで組織されている西部地域資源協会連盟(WORC)は、米農務
省(USDA)に対し、パッカーの家畜取引に一定の制限を設ける規則の制定を
求める申請を行った。これに対し、USDAは、1月14日付けで、この規則制
定に関する関係者の意見を求める旨の官報公告を行った。

  WORCは、コロラド州、アイダホ州、モンタナ州、ノースダコタ州、サウス
ダコタ州、ワイオミング州の牧場主・農家、中小企業経営者、地域住民などによ
って構成される団体の連盟で、全体の会員数は約6,000人であり、自然資源
や家族経営農業を守ることなどを目的として、79年から活動している。

  WORCは、先ごろ、USDAに対し、パッカー・ストックヤード法に基づき、
食肉加工処理業者(パッカー)の肉牛取引に一定の制限を設けることを求める申
請を行った。その内容は、@出荷時の取引価格が明示されていない事前契約に基
づき、と畜向け肉牛を売買することを禁止する、A公開市場において販売するこ
と以外の目的で、パッカーが肥育牛を飼養することを禁止する、こととなってい
る。WORCは、この申請の理由について、「事前契約やパッカー所有のと畜牛
の出荷により、恣意的な価格操作が行われ、肉牛価格低落の原因となっている」
と説明している。

  パッカーの寡占化問題に関しては、95年の初めごろからの肉牛取引価格の低
落を背景に、肉牛生産者などから寡占化による弊害の是正を求める声が上がって
いた。USDAは、議会から求められた寡占化などに関する報告を96年の2月
に公表し、さらに、実体を究明するため、諮問委員会を設置して調査を実施し、
96年6月にも報告書を公表している。

  これらの報告書では、寡占化の進展については認めているものの、寡占化と肉
牛価格低落との因果関係を認めるまでには至っていない。また、報告書は、公正
な肉牛取引を確保するための対策として、反トラスト法に基づく違法行為監視の
強化、各種取引形態別の取引情報や輸出取引情報の公表体制の充実などを提言し
ている。これらの提言に対してUSDAは、これまで、取引情報の公表などに取
り組んでおり、今回の規則制定の検討もこれらのパッカー寡占化問題対策の一環
と考えている。

  今回の意見聴取期間は3カ月間で、4月15日が期限となっている。グリック
マン農務長官は、「USDAは、申請者が提起している寡占化問題の重要性を認
識しており、この件について十分な検討を行うためにも、この問題について、広
い範囲から意見が寄せられることを期待している」と述べている。

  WORCの申請内容は、自由な商取引に一定の制限を設け、パッカーの事業活
動に制約を加えることになるものであるため、パッカー側からどのような意見が
提出されるか、注目されている。

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