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EUの豚コレラ問題をめぐる状況(続報)


【ブラッセル駐在員 東郷 行雄 5月7日発】 今年に入り、ドイツ、オランダ
で発生した豚コレラは、ドイツでは下火になっているもののオランダでは依然EU
による介入買い上げが増加しており、さらに4月中旬にはスペインでも新たな豚コ
レラの発生が確認されるなど、EUの豚肉市場は域内の供給不足も懸念される状況
になっている。

  ドイツの統計機関による近年のEU12カ国の豚肉需給バランスは次の通りで
ある。  (単位:千トン、と体重)
      94年    95年
 生産量  15,085       15,035
 域外輸入量  21           15
 域外輸出量   892          631
 消費量    14,158       14,319
 自給率      107%         105%

  国別には、自給率がデンマーク(448%)やオランダ(276%)のように
100%を大幅に超える国がある一方で、ドイツ、イタリア、イギリスのように自
給率が70%前後の国があるなど、EUの豚肉産業は加盟国が相互に過不足を補っ
て全体として100%をやや上回る自給率を維持している構造となっている。

  したがって、域外向けの豚肉の輸出比率が最も高いデンマークでも全輸出量の
65%(95年)は域内向けであり、オランダについては同95%が域内向けとな
っているなど、域外向け輸出は極めて限られた量の中で行われている実状にある。

  こうした需給事情の中で、今年に入ってドイツ、オランダで発生した豚コレラは、
ドイツでは下火になって生体豚の移動制限区域が縮小に向かっているものの、オラ
ンダでは依然として収まる気配が見られず、EU委員会は5月5日、市場介入措置
による同国の生体豚買い上げ頭数をそれまでの218万頭からさらに50万頭を追
加する決定を行った。

  この間、昨年末以来デンマークなど主要国から出されていた豚肉の民間在庫補助
制度の発動要請は影を潜めたほか、この3カ月間で域内の生産者価格が約3分の1
上昇するなど、EUの豚肉需給は一転してタイトな状況になってきている。

 また、オランダ議会は感染地域における買い上げ豚肉の過剰在庫を解消するため、
今後4カ月間をかけて生後2週齢までのすべての子豚約400万頭のと畜処分を検
討していることも伝えられており、これが実施に移されるとオランダの年間と畜頭
数(約1,900万頭)の5分の1に当たる膨大な頭数が処分されることになる。

  さらに、オランダからの生体豚輸出先ではドイツに次いで頭数が多いスペイン
(約112万頭、95年)でも、最近新たな豚コレラの発生が確認されており、同
国では現在50万頭の豚が移動を制限され、約20万頭の介入買い上げ措置が決定
された。

  このようにEUの豚肉市場は、急激に拡大した豚コレラ問題によりますます供給
不足の懸念が高まっており、一部の関係者からは、今後デンマークなどの輸出国は
域外向け輸出より域内への供給を優先することになるだろうとの声も出ている。



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