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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 11月13日発】ダチョウは、従来、皮革や 羽毛の生産を目的として飼育されてきたが、最近では食肉としての用途も定着し てきた。消費者は、レッドミートの風味とホワイトミートの健康的なイメージの 両者を満足させる食肉として、ダチョウ肉を受け入れているようである。 EUでは、約1,500戸の生産者が約4万羽のダチョウを飼育しているとみ られる。「オーストリッチ」といえば、極めて高級な皮革の代名詞でもあり、1 頭当たりのなめし皮の取引価格は300USドルとも言われている。しかしなが ら、EUでは、こういった高級皮革の原皮を生産する技術がまだ確立していない ため、ダチョウは繁殖および食肉生産を主たる目的として飼養されている。 EUのダチョウ産業の歴史はまだ浅く、イギリスでも1990年に初めて畜産 としての飼育が始まった。現在約200の生産者が、4千羽以上のダチョウを飼 育しているとみられる。ダチョウ肉市場は年々拡大しており、現在は約130ト ン程度とみられている。このうち国産肉は30トン、域内輸入が20トンであり、 残りは南アフリカや米国から輸入されている(EUとしての輸入量は1,800 トン程度と推定されている)。 ダチョウは95〜110kgに達した時点でと畜場に出荷されている。出荷まで の飼育期間は12〜14ヵ月と長期にわたるため、小規模生産であることとも相 まって、生産コストは安価ではない。このため、1頭当たりの出荷価格はおおむ ね250〜500英ポンド(5〜10万円)程度で、流通段階では、フィレで 18〜26英ポンド(3,600〜5,200円)/kg、その他の部位12〜20 英ポンド(2,400〜4,000円)/kg、加工済み(バーガー等)6〜12 英ポンド(1,200〜2,400円)/kg程度となっている。消費量の7割 はスーパーマーケットで販売されているとみられる。あるスーパーで調査したと ころでは、牛フィレステーキが17英ポンド(3,400円)に対して、ダチョ ウ肉が21英ポンド(4,200円)とかなり高価格となっている。こうした価 格にもかかわらず、需要が増加している理由には、ダチョウ肉が低脂肪、低コレ ステロールであり、かつ、栄養面で優れていると信じられていること、牛肉と風 味が似ているとして、安全性や健康志向の面から牛肉の代替となる食肉を求める 消費者に受け入れられていること、さらに、粗放的な飼養形態が動物愛護面でア ピールしていることなどが挙げられる。ただし、高価格は需要の抑制要因の一つ でもある。 また、イギリスのと畜能力も極めて低い。同国の指定と畜場のと畜能力は、お おむね1頭〜25頭/週である。その他フランス、ベルギー、オランダにダチョ ウのと畜の許可を受けた処理場があるが、状況は似ている。 食肉の原産地や飼養方法が消費者の大きな関心となる中で、輸入依存体質から 国内生産へのシフト、次いでと畜能力の向上が今後のイギリスのダチョウ産業の カギとみられる。
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