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豪州:食肉検査制度改革に危険信号


【シドニー駐在員 鈴木 稔 11月20日発】 豪州連邦政府は、現在、危害分析重
要監視点(HACCP)方式の導入、各企業の職員による検査を柱とする食肉検査
制度の改革を実現すべく、従来の連邦政府検査から民間検査へ移行させるためのト
ライアルを進めているが、先頃、米国農務省は、このシステムで検査された食肉の
輸入は認められないとの見解を公式に表明し、豪州の食肉検査制度の改革に危険信
号がともった。

 豪州では、輸出用食肉の衛生検査は、連邦政府(豪州検疫検査局:AQIS)の
所管であるが、そのコストは全て受益者負担となっている。食肉業界からは、検査
コストの負担が重く、国際競争力を阻害しているとの批判が従来から絶えず、政府
は、この批判に応える形で、昨年来、食肉検査制度の改革を推進している。

 改革の骨子は、@HACCP方式による検査システムの構築、Aその上で、AQ
ISの指導・監督の下、従来のAQIS検査官に代わり、各企業(パッカー)職員
が食肉検査を行うというものである。

 現在、輸出食肉検査を企業独自の検査に移行させるための試行プロジェクトが進
められているが、今年3月、連邦政府は、米国農務省に対し、この試行プロジェク
ト参加プラントで製造される食肉を、政府検査を受けたものと同等のものとして輸
入を承認するよう要請していた。

 しかし、先頃、米国農務省は、この方式では、政府の「監視」が極端に弱まり、
安全性の信頼性が確保されないとして、受け入れられない旨を書面で回答した。   
 
 豪州にとって、食肉の最大の輸出先の1つであり、また、輸入承認をとりつける
上での最難関と考えられる米国の拒絶により、食肉検査制度の改革は、その実現が
極めて危ぶまれる状況となった。

 HACCP導入は是としても、最終的な良否の判断を、政府でなく、利害の当事
者が下す点は、検査の公正・中立性という点で疑問であり、また、食肉の一層の安
全性の確保、消費者等の信頼確保という世界的な潮流(時代の要請)に逆行する感
もあり、常識的に考えても、諸外国が受け入れ難いものであると思われる。

 アンダーソン第一次産業大臣は7〜8月に訪米・訪日し、グリックマン農務長官
等と会談した際、食肉検査制度改革に理解を求めるなど、改革に積極的に取り組ん
できた。また、今年、5年振りにAQISの食肉検査料が大幅に引き上げられたが、
その際にも、大臣は制度改革により、近い将来、コストは大幅に削減されるとして
業界を説得するなど、改革の実現に自信満々であった。今回の米国の拒否により、
業界の政府批判が強まるのは必至であり、今後、大臣が制度改革にどのように対処
していくか注目される。



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