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家畜の輸送についてEU議会で論議


【ブラッセル駐在員 井田 俊二 10月23日発】EU議会で家畜輸送規則に
照らした保護措置の実態に関する報告書が提出され、採択された。同報告書によ
ると、依然として長時間輸送等の劣悪な状況下での家畜輸送の実態が明らかにさ
れており、現実の輸送状況の改善に向けて、今後、EU議会で活発な議論が予想
されている。

 EUでは、年間約1千4百万頭の家畜がEU域内で輸送されており、また、約
百万頭のと畜向けの家畜が、主に中東ほかのEU域外に輸出されるのに対して、
230万頭以上の家畜がEU域外から輸入されている。

 家畜の輸送に関するEU規則は、輸送中の動物保護の向上を目的として、91
年のEU指令で定められた。また、95年のEU指令では内容の強化が図られ、
輸送時間の制限(通常の輸送車輌での連続輸送時間は8時間以内)、輸送計画の
作成、獣医師による監視、運転手の登録および違反に対する制裁措置等が規定さ
れた。さらに、今年の6月には、95年のEU指令に関する家畜輸送の追加規則
(連続8時間を超えて家畜を輸送する場合の車輌の設備要件)がEU委員会から
農相理事会に提案された。

 このたびEU議会で採択された報告書は、今年6月のEU委員会の提案に絡む
ものである。この報告書では、明らかにEU指令に違反したとみられる長時間輸
送により多数の家畜が疲弊した状況が取り上げられ、依然として行われている劣
悪な環境下での家畜輸送の実態が紹介されている。その要因として、95年のE
U指令に基づく、各加盟国における法令の内容が不適切であること。特に5カ国
においては未だ法令が制定されていないことを指摘した。さらに、@最大輸送時
間を8時間とすること、A家畜の輸送に関する技術面での詳細なリストの必要性、
B運送業者を承認する際の徹底したチェックシステムの導入、C飼育地に近いと
畜場でのと畜、D長距離輸送での生体に代わる食肉輸送の必要性などを訴えてい
る。

 EU議会は、この報告書を採択するとともに、さらに、動物愛護基準を充たし
た家畜から生産されたことを示す食肉の品質ラベルの導入および長距離輸送にお
ける鉄道、船舶輸送の励行等の意見をEU委員会に対して行うこととした。

 これを受けてEU委員会では、改善の必要性について同様の認識があることを
明らかにしている。

 また、これとは別に10月下旬にはEU議会において家畜の輸送に関する報告
書が予定されており、EU議会では動物愛護に関する議論が今後さらに活発化す
る状況となっている。




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