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偽オーガニック小麦生産者に有罪判決:豪州


【シドニー駐在員 鈴木 稔 10月20日発】 先頃、禁止されている除草剤を使
用して生産された小麦を「オーガニック小麦」と偽って契約先の企業に販売した
小麦生産者に、懲役2年の有罪判決が下された。本件は、オーガニック表示に関
する不正行為が罪に問われた初めての事例であるが、今後のオーガニック食品の
生産・消費への影響が懸念されるとともに、不正監視の難しさが浮き彫りにされ
た。

 先頃、ブリスベン地方裁判所は、豪州で初めてのケースとされる、「オーガニ
ック」表示に関する不正行為に関して、有罪判決を下した。

 有罪とされたのは、91年に、禁止されている除草剤を使用して生産された小
麦を「オーガニック小麦」と偽って契約先の企業に販売(総額27万8千ドル)
したニューサウスウエールズ州の小麦生産者であり、懲役2年が求刑された。

 今回の判決に関し、豪州の代表的なオーガニック認証団体であるNASSA
(有罪判決を受けた生産者をオーガニック生産者と認証した団体でもある)のデ
ナム会長は、不正を行った者は厳しく処せられることが明らかとなり、これはオ
ーガニック食品に対する消費者の信頼感を一層強くさせると考えると述べるとと
もに、このような不正は極めてまれであり、約1200のオーガニック農場は、
基準を遵守して生産を行っていること、NASSAのモニターシステムも不正
のあった91年当時より厳密なものとなっていると述べ、今後の生産・消費に
は悪影響はないとの見解を示している。

 しかし、その一方で、クインズランド州にある世界最大規模(1万ヘクタール)
のオーガニック小麦生産農場の経営責任者は、このような不正行為は、人間のす
ることであり、その再発を防止する術はなく、本件は、消費者の不信感等の計り
知れない危害をすでにもたらしていると述べている。

 デナム会長も不正は不正であり、NASSAも毎日24時間、オーガニック生
産者を監視し続けることは不可能とし、再発を否定できないことを認めているが、
その一方でオーガニック食品に関して、国内に規制法令がないことも問題点とし
て指摘している。現在、豪州では、オーガニック食品に関する法律は、輸出に関
連ではあるが、国内流通に関するものは検討段階にあり、未だ制定されていない。
 
 わが国もオーガニックが注目を集めているが、このことは、ごく小さな不正行
為でも、消費者に大きな不信感を与え、多くの生産者の努力を無駄にする可能性
を秘めていることを教訓として生かすことの重要性を示していると思われる。



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