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【シンガポール駐在員 外山 高士 10月23日発】 最近の東南アジアの通貨 危機の中、シンガポールにおいては様々な品目で価格への影響が見られる。しか し、鶏肉の価格は、3ヶ月前と比較するとほぼ同水準で推移しており、価格の決 定には為替以外の要因が大きく関係しているものと見られている。 最近の東南アジアの通貨下落の中で、比較的下落率の低いシンガポールドルに おいては、シンガポールの輸入品の価格が低下傾向にある。このような状況の中、 同国内の食肉の価格に関しては、鶏肉が3ヶ月前と比較して、ほぼ同水準で推移 しており、為替の要因が直接価格に反映されていない状況にある。 シンガポールでは、タイの通貨バーツの下落に始まった周辺諸国の通貨危機の 中、同国の通貨ドルが比較的その影響を受けなかったことから、これら周辺諸国 からの輸入品の価格が相対的に低下し、同国内の様々な品目において価格の低下 が見られている。 同国は、その国土が小さいことから食料の供給は、ほとんど近隣国からの輸入 に頼っている。鶏肉と豚肉についても、消費量の約90%を生体でマレーシアか ら輸入している。鶏肉の価格についてみると、タイの通貨バーツの下落の始まっ た3ヶ月前と比較して、ほとんど低下していない。 これは鶏肉が、マレーシアから輸入される場合、対シンガポールドルに対して 6%程度しか上昇していないUSドルの長期契約で取り引きされているため、為 替の変動があまり反映されていないことが価格が低下していない主な要因と見ら れている。さらに、マレーシアの農家等は、複数の輸出業者と取り引きしている ため、鶏肉の販売価格には強気に出ており、値下げの交渉には応じていないとの 見方もあり、流通上にも価格が下がらない要因が見られるようである。また、鶏 肉については、輸入飼料を利用するというマレーシア養鶏産業の事情から、その 生産費の65%を占める飼料費が、通貨の低下に伴い上昇したことも価格が低下 していない要因の一つと見られている。 一方、豚肉は、鶏肉と同様にマレーシアから生体で輸入されているものの、シ ンガポール国内においての取り引きは、セリ取引が中心となるため、シンガポー ルドルで取り引きされている。このため、輸入飼料による価格の上昇は鶏肉と同 様にあるものの、USドルを用いず即日の現金決済で行われることにより、マレ ーシアの通貨リンギットの低下を直接価格に反映することが可能となっており、 3ヶ月前と比較すると10%程度価格の低下が見られている。 食料の多くを輸入に頼っているシンガポールにおいては、為替の動向が価格に 反映されやすいものの、鶏肉の場合、契約・流通様式や産地の状況も価格決定の 大きな要因となるものと見られている。
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