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【シンガポール駐在員 山田 理 9月25日発】 マレーシアでは、為替相 場急落により、鶏肉の生産コストに大きく影響する飼料価格が上昇している。 このため、政府は、鶏肉の販売上限価格の大幅な引き上げを決めた。為替相場 下落の影響は各方面に波及しているが、一般市民の生活にも徐々に影響が出始 めている。 マレーシアでは、物価上昇を抑制するため、主要食料品の多くは、政府により 価格が管理されている。畜産物の中で、最も消費の多い鶏肉も(95年の1人当た りの鶏肉消費量は、33キロ(枝肉ベース))、政府による価格管理品目のひとつ になっている。 鶏肉の価格については、政府、生産者等で構成する委員会が、生産者の出荷価 格の上限となる指標価格を週ごとに決定している。実際の取り引きでは、指標価 格より若干低い水準で、その時点の需給状況及び生産された鶏肉の品質等を勘案 して価格が決められる。 今年7月上旬の指標価格は、生体1キロ当たり2.30リンギ(約93円)で、 97年1月以降で最も低い水準であった。これは、今年4月以来、供給過剰によ り鶏肉価格が低落しており、実際の取引価格は2.10前後と低迷していたため、 指標価格も実勢価格を考慮し、引き下げられたことによる。 しかし、その後状況は一変した。生産者が協調して実施していた生産調整が効 果を見せ始め、鶏肉価格は回復基調に向かった。 さらに、こうした中で、この時期、タイのバーツ相場急落をきっかけに、マレ ーシアを含め他の東南アジア諸国の通貨は大幅に下落した。このため、マレーシ アでも輸入品の価格が上昇し、原料の多くを輸入に頼る飼料会社は一斉に値上げ に動いた。 結果として、飼料費が生産コストの6割以上を占める鶏肉は、大きな影響を受 け、8月時点の鶏肉の1キロ当たりの生産コストは、2.70リンギにも達した。 政府としても、指標価格を生産コスト以上に設定せざるを得ない状況となり、8 月21日には指標価格は2.70リンギ、8月30日からは2.90リンギに設 定された。マレーシアの鶏肉価格は、わずか1ヶ月の間に26.1%も大幅に上 昇したことになる。 政府は、鶏肉価格の引き上げを認めるに当たり、消費者への影響を考慮し、鶏 肉の指標価格は来年2月まで引き上げないことを生産者に確認している。 しかし、複数の要因が同時に重なったためとは言え、同国における最も重要な 畜産物である鶏肉の価格上昇は、あまりにも急激で、かつ大幅なものである。今 回の鶏肉価格の上昇が消費者へ与える影響は非常に大きく、消費者の不満が高ま ることは確実とみられている。
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