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環境問題に直面するノースカロライナ州の養豚


【デンバー駐在員 藤野 哲也 9月25日発】 ノースカロライナ州の養豚
産業は、垂直統合により目覚ましい発展を遂げてきた。しかし、95年に起き
たラグーンの決壊によるふん尿流出事故を契機に、州民の環境問題への関心が
一気に高まり、今般、同州において豚舎等建設の2年間中止を含む厳しい環境
法が成立した。

 ノースカロライナの奇跡と言われる同州の養豚産業は、垂直統合を基本とし
て目覚ましい発展を遂げ、その肉豚飼養頭数は、現在では、伝統的な肉豚飼養
州であるアイオワ州に次ぐ全米第2位の地位を占めるまでに成長した。

 しかし、1995年6月の台風によって生じたラグーンの決壊による豚ふん
尿の流出事故は、その規模が合計で8エーカー(約3.2ha)にもおよび、
また、河川への流出量は、約2千5百万ガロン(約9万kl)に上った。この
事故のため、19マイル(約30q)にわたり魚類の被害が確認されたとされ
ている。これを契機に、環境団体を中心として環境問題に対する関心が一気に
高まり、養豚産業への風当たりはますます強まった。

 このような中、今般、ノースカロライナ州で、養豚産業にとって非常に厳し
い「汚水浄化責任法」が成立した。

 これによると、1997年3月1日に遡って1999年3月1日までの2年
間、原則として飼養頭数250頭以上の肉豚生産者の豚舎やラグーン等の建設
が一時中止されることになり、新規参入はもとより、実質的に規模拡大が制限
されることになった。また、この法律に基づき、郡では、大規模経営体(飼養
する家畜の生体重が合計で60万ポンド(約272トン)を超えるもの)につ
いては、ゾーニング(地域内における豚舎等の建築を制限する規定)の規定を
それぞれ定めることができることとなった。これにより、豚舎等は、原則とし
て最低でも住宅から1,500フィート(約450b)、学校や病院等からは
2,500フィート(約750b)以上離れた場所に建築しなければならなく
なる。

 また、併せて、ノースカロライナ大学に臭気の抑制に関する研究調査を依頼
し、その報告内容の実用化が可能な場合には、99年3月迄に臭気に関する臨
時の規制を実施するとしている。加えて、ラグーンの改良や新たなふん尿処理
方法についての研究を行うことも盛り込まれている。

 ノースカロライナ州では、郊外への人口流出による、いわゆるスプロール化
現象の進展の結果、市町村における汚物処理能力が限界に達し、その対応策が
緊急の課題であると指摘されており、同法では、他の産業や市町村の汚水処理
システムやゴルフコース等についても基準等の見直しを行うこととしている。



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