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港湾労働争議が深刻化


【シドニー駐在員 野村 俊夫 4月16日発】 豪州の主要な輸出港では、港湾
労働争議が深刻化しており、農産物を含む輸出への影響が懸念されている。組合側
と企業側とが緊迫したにらみ合いを続ける中で、連邦保守政権と農業者団体が企業
側を全面的に支援しており、今後、解決に向けてはかなりの紆余曲折が予想される。 

 豪州では、2大港湾荷役企業の1つであるパトリック社が、4月7日、1400
人もの労働組合員を即時解雇し、代わりに非組合員労働者を雇用すると発表して以
来、労働争議が深刻化している。組合側は、連邦裁判所に解雇が違法である旨を提
訴する一方、全国の主要輸出港に組合員を動員してピケットをはり、ドックへの船
舶・貨物の搬入を実力で阻止する行動に出るなど、事態は混迷を深めている。

 ちなみに、豪州は、旧宗主国であるイギリスの影響もあって、従前から労働組合
の影響力が極めて強い。中でも、豪州港湾労働者組合(Maritime Union of Australia
;MUA)は、全国の港湾荷役労働者をほぼ完全に掌握しており、その影響力の強
さと争議の際の強硬な行動で、かねてから有名であった。

 しかし、今回は、組合側が逮捕者を出しながら必死に抵抗したにもかかわらず、
周到に準備していた企業側が解雇の発表から間髪を入れずに非組合員労働者を現場
に配置したため、一部の輸出港では、ほぼ半世紀ぶりに非組合員による港湾荷役作
業が決行された。

 一方、ハワード連邦保守政権は、企業側を全面的に支援しており、解雇の合法性を
示唆しつつ、入港船舶および貨物に新たな課徴金を課して被解雇者の退職手当の財源
とする法案を議会に提出するなど、組合への対決姿勢を強めている。

 また、今回の労働争議の特徴としては、大手荷役企業および連邦政府のみならず、
農業生産者の全国団体までもが、歩調をそろえて組合側に対決していることが挙げら
れる。

  豪州農業者連合(National Farmers Federation;NFF)は、かねてから、非効
率な港湾荷役による農産物の輸出競争力の低下を懸念していたが、今年1月には非組
合員労働者による自前の荷役企業を設立し、組合側への対決姿勢を鮮明にしていた。
ちなみに、今回、パトリック社は、このNFF傘下の荷役企業からも作業労働者の供
給を受け、大量解雇の穴埋めを行うとしている。

 現在、シドニーを含む主要な輸出港では、組合側と企業側とが緊迫したにらみ合い
を続けているが、事態の進展は解雇の合法性をめぐる連邦裁判所の判断に委ねられる
形となっている。政府野党である労働党も事態を重視しており、当面は目が離せない
状況が続くと見られている。



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