ALIC/WEEKLY
【ブラッセル駐在員 池田 一樹 8月6日発】EUは、家畜の飼料に使用されるサイ トラスパルプについて、ダイオキシンの含有許容量を定めた。これは、本年3月、 ブラジルから輸入された飼料原料用サイトラスパルプを汚染源とする、生乳のダイ オキシン汚染が発覚したことに基づく措置である。
サイトラスパルプは、かんきつ類の加工の際に生ずる果皮などを乾燥、粉砕した
もので、ビートパルプ程度の飼料価値を有する。EUで使用される飼料用サイトラ
スパルプは、すべて輸入である。毎年100〜200万トン程度輸入されており、
96年度の輸入量は160万トンとなっている。輸入先は米国およびブラジルであ
る。
本年4月、ドイツ南部で、生乳から高濃度のダイオキシンが検出された。ドイツ
当局の調査により、原因がブラジルから輸入されたサイトラスパルプにあることが
判明した。サイトラスパルプの汚染源はこれまでのところ断定されていない。ただ
し、ブラジル当局は、当初、乾燥工程で使用する燃料に添加されたテトラクロロエ
チレンが汚染源であると述べた。その後、乾燥時間を短縮するために、乾燥前のサ
イトラスパルプに添加した石灰が汚染源であるとし、前説を翻したが、ブラジルの
かんきつ業界は燃料が汚染源であるとしている。
事態を重視したEUは、輸入を禁止する法的根拠がない上、早期にサイトラスパ
ルプの汚染源を確定し、製造工程の改善による汚染防止を図ることも困難な状況の
下で、公衆衛生上の安全性を確保するためには、飼料用原料のサイトラスパルプの
ダイオキシン含有許容量を定めざるを得ないと結論した。7月24日に施行された
法令で定められた許容量は、 500pg I-TEQ/kgである。「I-TEQ」はダイオキ
シンを測定する単位(国際毒性等量)である。ダイオキシンには多くの同族体があ
るため、最も毒性の強い2,3,7,8−TCDD(tetra
chloro dibenzo-p-dioxin)
の毒性を1として、他の同族体の毒性を換算することとしている。なお、加盟国独
自の輸入禁止措置は可能であり、既にアイルランドおよびベルギーはブラジル産サ
イトラスパルプの輸入を禁止している。汚染が発覚して以来、同国からの輸出は行
われていないが、ポルトガルおよびフランスはこれが再開されるようであれば、輸
入禁止措置を取るとしている。
また、今般設定された値は、ダイオキシンの許容量についてはより詳細な科学的
な検討が必要であることなどから、あくまでも暫定値であるとされており、本年中
に、検討結果に応じて見直しを行うこととしている。
一方、これまでに約10万トンのブラジル産輸入サイトラスパルプにダイオキシ
ン汚染が確認されている。このうち
50%はドイツ、40%はオランダ、8%は
ベルギーで保管されている。これらの在庫についてEUは、ブラジルへ返送し、処
分することが最善であるとし、その費用負担をブラジルに求めている。しかしなが
ら、これまでのところ、ブラジル政府はこれを受け入れていない。また、今回の決
定についてブラジル政府筋は、国内消費を含め新たな市場の開拓は容易であるとコ
メントしていると伝えられている。
元のページに戻る