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飲用乳市場をめぐる競争が激化(豪州)


【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月6日発】豪州では、国内最大の協同組合系飲
用乳メーカーが、この度、自社株式の一部上場により、多額の事業資金を調達す
るとの計画を発表した。7月1日から実施されたニューサウスウェールズ州の飲
用乳流通販売規制の撤廃をきっかけに、飲用乳市場をめぐる乳業メーカー間の競
争がますます激しくなっている。
 

 豪州では、ニューサウスウェールズ(NSW)州を基盤とする国内最大の協同
組合系飲用乳メーカーであるデイリーファーマーズ社が、この度、自社株式の一
部を株式市場に上場することにより、2〜3億ドル(約180〜270億円:1
豪ドル=90円)の事業資金を調達するという計画を発表した。

 同社は、NSW州の約3,500戸の酪農家を組合員とする大手の協同組合系
企業で、飲用乳を中心に、チーズ、ヨーグルトなどを製造販売しており、昨年度
の総販売額は11億ドル(約990億円)に達している。

 また、同社は、国内3大飲用乳メーカーの一つでもあり、ライバルであるナシ
ョナルフーズ社(豪州資本、株式会社)とパーマラット社(イタリア資本、同)
を併せると、国内飲用乳全体の約85%を占めている。

 しかし、同社の幹部によると、各メーカーは、各州の飲用乳流通販売規制の緩
和(NSW州では7月1日から実施)を背景に、国内飲用乳市場をめぐる競争を
大幅に激化させている。

 同社は、先月も、クイーンズランド州を基盤とする中堅乳業メーカー(ポール社)
の買収をめぐり、ライバルのパーマラット社と激烈な争いを展開し、最終的に敗
れて撤退した経緯がある。

 ちなみに、同社は、NSW州で圧倒的な飲用乳供給シェアを誇っているものの、
その他の州でのシェアは低く(ヴィクトリア州では約7%)、今後、ライバル2
社に対抗してシェアを維持、拡大するためには、相当の事業資金が必要になると
見られている。

 しかし、同社の幹部は、組合員が経営の主導権を維持するためには、少なくと
も株式の75%を保持しなければならないとしており、今回の株式上場計画も、
全体の25%に限定している。

 なお、同社が今回の計画を実行に移すには、最低でも全組合員の75%の賛同
を得なければならない。

 このことについて、同社幹部は、本年末までに組合員の賛否を問う投票を行う
と述べて計画への自信を示しているが、組合員の間には部外者に主導権を握られ
ることへの拒否反応も強く、予断を許さない状況となっている。

 一方、こうした中で、先日、NSW州の酪農協同組合は、傘下の組合員に対し、
生産者乳価まで含めた飲用乳規制の完全撤廃が2000年までに実施されるとの
見解を示した。

 こうした生産者側の動向は、飲用乳市場をめぐる乳業メーカー間の生き残り競
争を、ますます刺激する方向に作用するものと見られている。




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