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【シンガポール駐在員 外山 高士 8月6日発】 タイで、鶏卵価格が高騰している。生産コストの上昇による生産量の減少など が主な要因であるが、同国の商務省は鶏卵生産者協会などと協力して、安価な鶏 卵の販売を行うなど、価格と流通の安定に努めており、今後の気温の低下による 生産量の増加を期待している。
タイでは、4月中旬に1.4バーツ/個(1バーツ=約3.6円)であった政
府の定める鶏卵の農家販売価格が、5月に1.9バーツ/個、6月には2バーツ/個
になり、6月の中旬より2.3バーツ/個に上昇している。このため、バンコク
市場における卸売価格も、1月に
1.62バーツ/個と前年同月を上回って以来、
上昇傾向で推移しており、6月の平均値(速報値)においても2.19バーツ/個
で、前年同月比37%上昇するなど、過去3年間で最高値となっている。また、こ
のことにより、同国の南部地域では、国境を越えてマレーシアから、より安価な鶏
卵が1週間に100万個近くも違法に輸入されるなど、鶏卵流通においても混乱を
来している。
同国においては、昨年の通貨バーツの下落により本年6月の消費者物価指数が前
年比10.7%増となるなど、物価がかなり上昇している。また、畜産農家におい
ては、輸入飼料の価格が上昇したことなどから生産コストが上昇しており、経営が
行き詰まり廃業する農家が多く出る状況となっている。一方、畜産物の消費は、こ
れまでの急速な経済成長を背景に増加傾向で伸びてきたものの、経済の停滞から給
与所得などの減少により、低下する状況となっている。
今回の鶏卵価格の上昇要因について同国政府は、豚肉、鶏肉の消費が停滞する中、
比較的安価な鶏卵に消費が集まっていることに加え、生産コストの上昇や鶏肉価格
の上昇により、農家が採卵鶏を早期に処理するなど、飼養羽数が減少したことが挙
げられる。さらに、4月から5月にかけて高温が続いたことによる産卵率の低下と、
採卵鶏の死亡率の増加が見られたことなどにより、生産量が30%以上低下したた
めと見ている。
これらのことから、同国商務省は消費者への対策として、主要なバンコク市場で
の鶏卵販売価格を2.3バーツ/個以下にするよう業者に要請したり、鶏卵生産者
協会や輸出業者などと協力して、政府が農家から鶏卵を3バーツ/個で買い上げた
後、2.3バーツ/個で消費者に売り渡す措置を設けるなど、鶏卵価格と流通の安
定に努めている。
同国では、7月から降雨があるなど比較的涼しくなってきたため、鶏卵の生産量
が増加しつつある。このため、今後の鶏卵価格は、すでに最大サイズの鶏卵価格が
下落し始めていることもあり、現在の価格より徐々に低下するものと期待されてい
る。
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