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米、インドネシアなどに小麦の無償援助を実施


【デンバー駐在員 藤野 哲也 8月6日発】米農務省(USDA)は、先般、
余剰農産物の対応策として、インドネシアなどに対し、小麦250万トンを無償
援助することを決定した。一方、市場志向性を方向付けた96年農業法に対する
評価は、二分しているものの、今のところ、肯定的な見方が多く出されている。

 

 96年農業法は、生産弾力化契約により、作付作物を自由化し、農家の市場志
向性を高めている。このことから、農家は市況に応じた穀物の作付けを行うこと
ができるようになったと同時に、(一方で、)農産物の価格変動などに対するリ
スク管理も求められることになった。

 米国は、世界のパンかごといわれるように農業については、輸出依存度が高い
ため、海外需要の動向が、農産物価格に大きく影響を与えることになる。

 昨年来のアジア経済危機および南米での穀物生産の増加などから、農産物の輸
出は伸び悩む一方で、国内の穀物も、中西部を中心に順調な成育をみせているこ
とから、その価格は、昨年に比べて大幅に下落している。これは、96年農業法
が成立した前後に、穀物価格が高騰していた時と比べると対照的である。

 このような状況を受けて、USDAは、7月18日、市場隔離の方策として、
小麦250万トン、金額にして2億5千万ドル(約358億円:1ドル=143.2円)
相当の海外無償援助を発表した。小麦の無償援助の対象国は、インドネシア、ア
フガニスタンなど十数国に上るものとみられている。中でも、インドネシアに対
する小麦の無償供与は、米国際開発庁(U.S.AID)によると、年末までに50
万トンに達するものと見込まれている。さらに、今後の状況によっては、来年3
月までに、百万トンの追加も考慮されるという。

 今回の無償供与のための小麦の買い付けは、商品金融公社(CCC)を通して
行われ、初回入札は、7月27日に実施されている。今後、小麦の買い付けは、
順次行われることになっており、USDAは、今回の小麦の買い付けにより、1
ブッシェル(27s)当たり10〜13セント(約14〜19円)の市場価格の
引き上げにつながるものと見込んでいる。

 また、これとは別に、U.S.AIDは、インドネシアに対し、PL480号タ
イトルU(贈与)に基づく5千万ドル(約72億円)相当の食料援助を予定して
いるという。加えて、USDAは、同タイトルT(低利融資による輸出販売)に
基づく4千万ドル(約57億円)の穀物輸出についても、インドネシア政府と協
議中であり、まもなく合意に達するものとみられている。

 現在の穀物の需給状況を反映して、96年農業法に対する評価は、二分してい
るが、全米一の農業団体であるファーム・ビューロー(FB)などは、これを肯
定的に捉えている。FBは、96年農業法が、市場志向性を目指すという趣旨通
りに機能しているとともに、生産者には、農家直接固定支払制度およびローンレ
ートによる安全保障(セーフティネット)が与えられているとして、今後とも農
業法の精神を継続するよう求めている。

 いずれにしても、農産物輸出が、その評価を左右するだけに、その動向が注目
される。




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