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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 11月26日発】EUは、11月25日にグレ ートブリテン産の牛肉などの輸出の解禁を決定した。イギリス産牛肉等は、96年 3月に、牛海綿状脳症(BSE)対策として輸出を禁止されたが、今春には北アイ ルランドが解禁されており、今回の決定により、全土からの輸出が解禁されること となった。ただし、実際に輸出が可能となる期日は、EU委員会の現地調査を待っ て決定される。 イギリスは、これまでさまざまなBSE対策を講じてきた。特に次の2つの措置 が、今回の解禁の重要な基盤となっている。 1 肉骨粉飼料の使用禁止措置の遵守 96年8月1日に、BSEの主要な伝搬経路である肉骨粉を飼料に利用するこ とを禁止した。今回の解禁は、感染源が断ち切られたと考えられるこの日以降生 まれた牛を対象としている。 このため、解禁措置は、「生年月日に基づく輸出措置」("Date Based Export Scheme"、以下「DBES」という)と呼ばれる。 2 BSE患畜の産子の処分 BSEは、母子感染が成立するとされている。このため、解禁対象となる96 年8月1日以降に生まれた牛で、母牛がBSEにかかった牛は、今後すべて殺処 分することを決定している。これまでは自主的に実施されており、11月上旬ま でに737頭が処分されていた。 今回の定められた、DBESの主要な条件は次のとおりである。 1 解禁措置の施行前に、BSE患畜の産子の処分措置を完了すること。その後該 当する産子が判明した場合は直ちに処分すること。 2 解禁対象品目 牛肉、牛肉製品など 3 DBES対象と畜牛 (1) 96年8月1日以降に生産されたものであること。 (2) 由来牛群および母牛までさかのぼって履歴を追跡できること。 (3) 6ヵ月から30ヵ月齢であること。 (4) 母牛はBSEにかかったり、そのおそれがなく、対象牛の出生後6ヵ月以上生 存していたこと。 4 個体識別およびその管理 対象牛は、耳標により個体識別がなされていること。識別番号は出生からと畜に 至るまでの全履歴とともに、牛パスポートあるいは政府のコンピュータシステムに 記録されていること。 5 その他 (1) と畜場はDBES対象と畜牛以外の牛をと畜しないこと。ただし、北アイルランド の場合、既に輸出が解禁されているBSE清浄群からの牛のと畜は差し支えな い。政府の指定が必要である。 (2) 骨を除くとともに、主要なリンパ節を除去すること。 EU委員会は、今後、現地調査を実施し、これらの条件が満たされていることを 確認した上で、輸出を再開できる期日を決定する。MLC(イギリス食肉家畜委員会) は、BSE患畜の産子の処分措置を完了することが必要なため、輸出再開は来年4月 以降になる見込みであるとコメントしている。 なお、北アイルランド産牛肉等は、同地域で、古くからコンピュータによる個体識 別システムが導入されており、過去長期間のBSEの疫学状況が確実に把握できるこ とから、本年3月に解禁されていた。
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