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【シンガポール駐在員 伊藤 憲一 11月26日発】先般、タイ産鶏肉からVR Eが検出された問題は記憶に新しいが、今般、香港の公衆衛生当局が実施した食品 検査で、タイ産豚肉に残留物質が確認されたとの報道があった。香港の消費者は、 病気、衛生面などに敏感になっているだけに、拡大している同豚肉の今後の輸出動 向が注目される。 香港の農業団体などは、輸出開始当初、1ヵ月当たり10頭を下回っていたタイ 産豚の輸入(生体換算)が、最近では約700頭に急増しているため、病気に冒さ れている危険性のある同豚の輸入急増に対し、在香港タイ領事館の前で抗議を行っ たが、同領事館の担当官は、同豚肉が香港での検疫検査により、病気がないことが 証明され安全であると回答していた。 しかし、タイの英字紙の報道によると、最近、香港の公衆衛生当局が無作為に抽 出したタイ産豚肉の検査で、心臓病を患っている消費者に影響する物質であるベー タ・アゴニストが、ごくわずか残留していることが確認された。この物質を養豚業 者が豚に使用すると、豚肉の赤身の割合を増加させることが可能であり、通常、ぜ んそく患者への処方薬として使われている。最近、香港へ輸出した3企業のうち、 2社が輸出した豚肉から発生したとしているが、その企業名は公表していない。こ れによりタイ産豚肉は、香港当局により輸入を禁止されるかもしれないと報じてい る。 タイ畜産振興局は、香港へ輸出された豚肉は、公衆衛生当局の厳格な検査を受け たものであるとしているが、今後とも香港は有望な輸出市場であり、かつ、最近輸 出量が拡大してきた矢先のことで、本件について深刻に受け止めている。 このため、同局は、再発防止策として、養豚農家を登録制にするとともに、12月 1日から同物質の使用を全面的に禁止することとした。なお、違反者に対しては処 罰を課すことを検討している。 先般、タイ産鶏肉からVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が検出され、日本で 大きな問題となったことは記憶に新しいものの、同豚肉の検査で再度残留が確認さ れれば別であるが、本件によって香港当局が同豚肉の輸入を禁止する可能性は低い ものとみられている。 また、中国産および地元産豚肉と比較して、バーツの下落などによりかなり安価 となっているタイ産豚肉は、経済的観念が強い香港の消費者にとって、かなり魅力 的なものとなっている。なお、香港で1日に消費される豚の頭数は、中国産が約5 千頭、地元産が約900頭で、タイ産はわずかな量となっているが、タイは香港へ の豚肉の輸出について、ポスト鶏肉を目指して力を注いでいる。 しかしながら、香港の公衆衛生当局は、同豚肉の検査を強化するとみられるもの の、香港の消費者は、昨年末の鳥インフルエンザ以降、病気、衛生面などに敏感に なっているだけに、拡大している同豚肉の今後の輸出動向が注目される。
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