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【デンバー駐在員 本郷 秀毅 11月25日発】豚価が26年ぶりの低水準に低迷 する中、全国豚肉生産者協議会(NPPC)は11月20日、クリントン大統領に対 して、養豚農家に対する緊急支援対策を要請した。これを受けるようにして、米農務 省(USDA)は同23日、総額5千万ドルの豚肉製品の買い上げ措置を発表した。 米国の豚飼養頭数は、95年から96年にかけて飼料穀物価格が急騰したことなど から、同期間に減少傾向となっていたものの、96年末からの飼料穀物価格の急落と 97年3月の台湾における口蹄疫の発生などを受けて、その後急速に増加に転じてい る。この結果、USDAによれば、98年の豚肉の生産量(枝肉換算ベース)は、97 年に比べ約9%の増加を示すものと見込まれている。 また、USDAが行った養豚農家に対する98年9月から99年2月までの期間の 生産意向調査によれば、養豚農家は、母豚飼養頭数を前年同期に比べさらに2〜3% 程度増加させたいとしていることから、99年の豚肉の生産量は、98年に比べさら に約4%増加するものと見込まれている。 この結果、肉豚の生産者価格は前年に比べ約6割の水準にまで急落しており、年間 の平均価格も生体100ポンド当たり約34ドル(90円/kg:1ドル=120円で 換算)となることが予想されている。これは、72年に約27ドル(71円/kg)の 平均価格を記録して以来、26年ぶりの低水準となる。99年も引き続き生産頭数が 増加すると見込まれることから、肉豚の生産者価格は、ほぼ同水準の33〜35ドル 程度で推移するものと見込まれている。 こうした事態を踏まえ、NPPCは 11月20日、クリントン大統領に対して、 養豚農家を救済するための緊急対策を講じることを求める要請書を送った。 その概要は以下のとおり。 @今回の危機に対処するための経済危機対策委員会の設置、A環境保護庁(EPA) による食肉処理加工場のと畜処理能力に係る規制の緩和などを通じたと畜処理能力の向 上、B政府による豚肉および豚肉製品買い入れの増加、C連邦金融機関に対する養豚農 家向け融資条件緩和の催促、D養豚農家を連邦緊急災害融資保証事業の対象とすること、 などである。 NPPCは、上記Aの要請と併せて、パッカーに対しても、と畜処理能力の向上とカ ナダ産ではなく米国産肥育豚の優先処理を行うよう要請した。 これを受けるようにして、USDAは同23日、価格支持を目的として、総額5千万 ドル(約60億円)の豚肉製品の買い上げ措置を発表した。この中でグリックマン農務 長官は、「今回の措置は養豚農家を支援するために講じている一連の対策として最新の 措置である」と語っている。 USDAは、昨年度(97年10月〜98年9月)、国内の緊急食料援助計画および 学校給食事業向けに、3千万ドル(約36億円)のボーナス買い入れを含め、8千5百 万ドル(約102億円)相当の豚肉を買い入れている。また、最近では、ロシアに対す る食糧援助の一環として、5万トンの豚肉がその対象に含められている。
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