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EUにおける豚コレラをめぐる対応状況


【ブラッセル駐在員 井田 俊二  2月5日発】EUでは、このたび豚コレラが
発生した加盟国に対する家畜等の輸入禁止措置の対象を発生地域ベースに限定する
とした規則を制定した。この結果、加盟国では一方的な輸入禁止措置を取ることが
禁止されるが、感染防止に苦慮する生産者等からの不満も見られている。

 EU域内では、今年に入ってからもオランダ、スペイン、ドイツといった加盟国
で新たな豚コレラの発生が確認されている。

 ドイツでの豚コレラは、最初繁殖農家で発生が確認されるとともに、それを発生
源として3カ所の地域で二次的な豚コレラの発生が確認された。その結果、6万3
千頭を上回る豚がと畜されている。

 このような状況に対して、隣接国であるベルギーにおいては、同国からの豚の輸
入を一時禁止する措置を取るとともに、オーストリアでも同様の措置が検討される
など加盟国の独自の動きが見られた。

 これに対して、域内における家畜流通の拡大・自由化を推進するEUは、豚コレ
ラが発生した場合の家畜や家畜精液等の輸入および移動の禁止措置を国家ベースで
行うことを禁止し、発生地域ベースに限定しなければならないとする規則を制定し
た。この結果、実質的におのおのの加盟国が豚コレラの発生国に対して独自の対応
を取ることが認められなくなった。

 1月下旬にベルギーでは、この取り決めに従って1月20日から実施したドイツ
からの豚の輸入禁止措置を同国の4つの発生地域に限定することとした。

 一方、スペインに対するポルトガルの輸入禁止措置についても同様の措置が求め
られることとなった。

 しかしながら、ドイツの豚コレラ発生地域に近いデンマークでは、感染防止に向
けた独自の動きが見られている。生産者は政府に対してドイツからのすべての家畜
輸送車について強制的検査の実施を要請する一方、デンマークから輸出する豚の輸
送車がドイツの農家またはと畜場から戻る際には、国境において自主的に輸送車の
消毒措置を取るなどの防衛措置を図っている。また、と畜業界からもEU規則に追
従している政府の姿勢に対して不満を表している。

 なお、こういった制約を被らない非加盟国のチェコでは、スペインに加えてドイ
ツからの家畜および畜産物の輸入禁止を実施している。



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