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豪州の生産見通し、肉牛、生乳ともに拡大傾向


【シドニー駐在員 藤島 博康 2月5日発】2月3日〜5日にかけて開催された
豪州農業資源経済局(ABARE)による年次農業観測会議では、肉牛生産、生乳
生産ともに、主要輸出市場であるアジアの経済動揺の影響を受けながらも、生産者
販売価格の上昇により、中期的には拡大傾向にあるとの見通しが示された。

 この会議は毎年2月初旬に開催されており、経済情勢、政策、気象条件などを総
合的に分析し、主要農産物ごとに、需給や貿易動向についてABAREより短中期
的な見通しが示される。

 肉牛部門に関しては、牛肉不況とも称された一昨年の価格水準からは引き続き回
復傾向にあり、97/98年度(7月〜6月)の平均生体市場価格は前年度に比べ
15%もの上昇と予測されている。この要因としては、輸出の増加を挙げており、
牛肉不況の元凶となった米国向け牛肉輸出の不振は、米国のキャトルサイクルが減
少局面に入ったことにより、大きく改善すると見込んでいる。

 また、米国と並ぶ主要な輸出市場であるアジアについては、経済混乱による消費
低下がマイナス効果となるものの、米ドルに対する豪ドル安によってアジア市場で
競合する米国産との価格競争力が高まるとし、米国産からのシェア奪回による輸出
増を見込んでいる。しかしながら、東南アジアを中心に近年、急拡大した生体牛輸
出については大幅に減少するとみられている。

 飼養頭数に関しては、97年の未経産牛および経産牛のと畜割合が48%と高水
準だったことから、98年3月末の頭数センサスでは前年同期より1.5%減少す
るとしているが、価格が回復基調にあることから、2001年には2千660万頭
まで回復すると見込んでいる。

 一方、酪農部門は、90年代に入ってからの生産の拡大基調を引き続き維持する
とし、97/98年度の生乳生産量は前年度を4%上回り、94億リットルになる
と予測している。

 生乳生産は、国際乳製品市場の好況に支えられ、90年から現在まで年率5%の
勢いで拡大しており、毎年度、過去最高を更新している。中期的にみても、この傾
向は続くとし、乳用経産牛頭数と1頭当たり乳量の緩やかな増加を背景に、200
2/3年度の生産量は110億リットルに上ると予測している。

 乳価に関しては、行政によって決定される現行の飲用乳価格の自由化という大き
な不確定要素があるものの、好調に推移するバター国際市況と、米ドルに対する豪
ドル安により97/98年度に1%の上昇と予測している。アジアの経済混乱によ
り、粉乳やチーズ輸出は数量的には減少するものの、豪ドル安により金額的な低下
は軽減されると見込んでいる。

 以上のとおり、肉牛、酪農ともに、輸出に関しては主要市場であるアジアの経済
混乱から回復という大きな不確定要素があるとしながらも、生産はともに拡大基調
にあるとしており、比較的明るい展望が示された。しかしながら、生産者サイドか
らは非常に楽観的な観測であるとし懐疑的な意見も飛び出す場面もみられ、今後の
動向が注目される。



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