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米生産者団体、チェックオフ制度の全体投票を要求


【デンバー駐在員 藤野 哲也 5月21日発】 現在、米国の牛肉および豚肉価格
は、生産量の増加などから低迷している。このような中、地方の生産者団体などは、
チェックオフ制度が中小規模の生産者に恩恵を与えていないとして、制度の継続を
問う全体投票を呼びかけるキャンペーンを開始した。

 チェックオフ制度は、生産者などから畜産物の取引時に賦課金を徴収し、これを
原資として、畜産物の販売促進、需要拡大および調査研究活動を行うものであり、
その賦課金は、現在、牛肉で生体1頭当たり1ドル、豚肉で生体100ポンドあた
り45セントとなっている。

 牛肉および豚肉のチェックオフ制度は、86年に創設されたもので、その運営機
関である全国組織のビーフ・ボードやポーク・ボードの役員の任命や予算、事業計
画の認可は農務長官が行うこととなっている。

 現在、牛肉および豚肉価格は、生産量の増加などから低迷していることから、生
産者などの一部から、消費促進活動などを行うチェックオフ制度に対する不満が出
ていた。また、併せて牛肉については、1人当たりの消費量の減少傾向に歯止めが
かからないことへの不満も大きなものとなっている。

 このような中、時をほぼ同じくして、牛肉および豚肉のそれぞれのチェックオフ
制度反対団体が、チェックオフ制度廃止を呼びかけるキャンペーンを開始した。こ
れらの団体は、チェックオフ制度の事業が、大規模生産者やパッカーの利益のため
に運営されており、中小規模の生産者にとって有益なものとなっていないと主張し
ている。

 なお、制度の継続に係る全体投票は、牛肉の場合、10%以上の生産者などから
の要求により実施できることとなっている。このことから、全体投票を行うために
は、牛肉約12万人、豚肉約2万人の生産者などの署名をそれぞれ集める必要があ
ると見込まれている。 

 一方、これに対し、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)および全国豚肉生産
者協議会(NPPC)が、本年、民間調査機関に依頼した調査によると、約7割の
牛肉および豚肉生産者がチェックオフ制度を支持しているという結果が出ており、
それぞれの団体ともに、チェックオフ制度は、生産者の規模を問わず、有益なもの
であると反論している。

 仮に全体投票が行われる場合、その経費は、ボード予算から賄われることになる
ため、その事業活動に支障が生じることが懸念される。NCBAでは、投票に要す
る経費を通常の海外市場開発年間予算額の約半分に相当すると見積もっており、今
後、価格回復策と併せて何らかの対応を迫られるものとみられている。

 

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