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【ブラッセル駐在員 井田 俊二 11月19日発】現在のEUにおける豚肉価格は、 過剰生産等の影響で需給が緩和し大幅に下落しているが、こうした中、フランスでは 11月に豚肉市況の回復を求めて大規模な生産者の抗議運動が行われた。フランス政 府では、9月の対策に続き11月に追加措置を打ち出した。 近年のEUにおける豚肉価格は、96年の牛海綿状脳症(BSE)発生による豚 肉の代替需要および97年のオランダにおける大規模な豚コレラ発生による供給量 の減少等により需給がひっ迫し堅調に推移した。 しかしながら、最近では主要豚生産国における増産の伸展とともに、オランダに おける豚コレラの終息および今年8月に発生したロシア経済危機の影響等により需 給が急速に緩和し、97年半ば以降、豚肉価格は急速に下落している。 EUでは、これまで豚肉市況回復に向けていくつかの対策が講じられているもの の、今後、豚飼養頭数の削減に向けて新たな対策が検討されている状況にある。 今回のフランスの豚生産者による抗議運動は、主要豚生産地であるフランス西部 のブルターニュ地方を中心に、北部から南西部にかけて複数の地域で1万人以上 (フランス全体の養豚農家戸数は約2万戸)の豚生産者が参加して行われた。この 抗議運動は、豚市場価格の急速な下落に伴い生産者の所得が減少したため、政府に 対して何らかの対策を講じるよう求めたものである。 抗議運動は、道路に豚を放ったり、スーパーマーケットの店頭に設置した柵に豚 を放ったりするほか、干し草やタイヤを燃やしたり、道路をゆっくりデモ行進を行 ってアピールした。 最近のフランスにおける豚肉価格は、1年前の12フラン/s(約264円)から 5.17フラン/s(約114円)と半分以下に下落し、記録的な低水準となってい る。 フランス政府は、豚肉価格の急激な下落の対策を検討するための会議を招集し、 9月には1億フラン(約22億円)規模の対策を講じることとした。この対策は、 おもに生産者の借入金利子(99年1〜12月)に対する資金として充当される。 さらに、11月には、1.5億フラン(約33億円)追加対策を行うことを公表し ている。また、EU委員会に対しては、統一的かつ実効の伴う豚の飼養頭数削減対 策の実施を働きかけている。 フランスにおける98年1〜6月の豚肉生産量、輸出および輸入状況は次の通り である。(単位:千トン、千頭、%)
97年 |
98年 |
前年比 |
||
豚肉生産量 |
1,102.1 |
1,130.5 |
+2.6 |
|
輸出 |
豚 肉 |
158.1 |
170.1 |
+7.6 |
生体豚 |
164.6 |
274.0 |
+66.5 |
|
輸入 |
豚 肉 |
138.9 |
158.9 |
+14.4 |
生体豚 |
253.1 |
122.9 |
-51.4 |
豚肉では、輸出入とも97年に続いて増加傾向にある一方、生体豚では、輸出が 大幅に増加(約7割)しているのに対して、輸入は大幅に減少(約5割)しており、 飼養頭数の減少に向けた傾向が見られる。
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