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経費削減や作目多様化を図る豪州肉牛経営


【シドニー駐在員 藤島 博康 11月19日発】豪州農業資源経済局(ABA
RE)が先ごろ発表した肉牛業界動向調査報告書によると、肉用牛販売を収入の
中心とする経営では、ここ数年の肉牛価格低迷による収入減への防衛策として、
経費の削減や、穀物栽培や羊飼養など作目の多様化を図る傾向にあるようだ。


 97/98年度(7月〜6月)での肉用牛経営の1経営体当たり平均現金収
入は前年度より2%増加した。一方で、現金支出が前年度より5%低下したこ
とにより、現金収支は大幅に向上し25,971ドルとなった。

 ABAREの分析によると、肉牛価格が回復基調に転じたことや、ここ数年
間の肉牛価格の低迷への防衛策として経費節減が図られたことなどが現金収支
の向上の主因となったとしている。また、97/98年度は、穀物栽培など他
の作目からの収入が増加しており、肉牛価格の低迷により、経営の多様化が進
んだことを示している。

 しかし、97/98年度の肉牛販売収入は、91/92年度から95/96
年度までの5年間の平均と比較して23%も減少しており、底を打ったとはいえ
価格が依然として低水準で推移したことを示している。

 償却費や家族労働費などを差引いた後の97/98年度の経営収支は、マイ
ナス13,665ドルとなり、85/86年度の調査で赤字となって以来、13
期連続の赤字を記録した。なお、赤字経営体の割合は、96/97年度の83%
から、97/98年度には77%に減少している。

 一方、93/94年度から97/98年度までの平均経営収支を飼養頭数規模
別にみると、5,500頭以上層では69%が黒字となり、経営規模が大きくな
るほど、黒字収支となる傾向がみられるとABAREは指摘している。また、全
般的に小規模な肉用牛経営では、農業外収入の割合が高くなる傾向がみられると
しており、大規模層での経営が比較的安定している一方、小規模層では兼業化の
方向にあるようだ。

 回復基調にあるものの、依然として低迷する肉牛市況に、肉牛生産者の疲弊感
は数字以上に強く、新たな牛肉格付制度による価格評価など本業である肉牛の価
格引上げに向けた打開策が熱望されている。

    肉用牛経営平均1戸当たり経営収支
  91/92年−95/96年平均 96/97年 97/98年
肉牛販売 121,648 92,818 93,931
他農業収入 11,585 11,927 14,381
現金収入計 147,650 124,140 126,401
現金支出 120,567 106,157 100,430
現金収支 27,083 16,230 25,971
償却/家族労賃等 45,892 36,451 39,636
経営収支 −18,810 −18,468 −13,665
単位:ドル、資料:ABARE「The Australian beef industry 1998」



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