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米、EUとのバナナ紛争に対し報復関税を提示


【デンバー駐在員 藤野 哲也 11月19日発】米通商代表部(USTR)
は11月10日、EUがバナナに関する世界貿易機関(WTO)裁定を履行し
なかった場合には、EU産農産物などに100%の報復関税を課すとの制裁案
を提示した。今後の牛肉の肥育ホルモン問題にも影響を与えることから、牛肉
業界はその成り行きを注目している。



 米通商代表部(USTR)は、11月10日、EUがバナナに関するWTO
裁定を履行しなかった場合には、EU産農産物などに100%の報復関税を
課すとの制裁案を提示した。

 このバナナ紛争の発端は、EUがアフリカ、カリブ海諸国および太平洋諸国
とバナナ枠組み協定を締結し、これ以外の諸国、特にラテンアメリカからのバ
ナナの輸入を許可制度にしていたことなどが背景となっている。米国はエクア
ドル、グアマテラ、ホンジュラスおよびメキシコと共同でWTOにパネル設置
を要請し、97年にWTOは、EUのバナナ輸入制度がラテンアメリカ産バナ
ナを不公正に取り扱っているとの裁定を下している。この裁定に基づき、EU
は99年1月1日までにその改善を図ることとされている。

 なお、EUは、98年6月にラテンアメリカ産バナナの輸入枠を35万トン
拡大し、253万トンとするとの提案を行ったが、米国などはこれを不服とし
ていた。

 USTRが今回提示した制裁措置は、EU産品に100%の関税を課すとい
うもので、農産物・食品関連では、チーズ、パン、フルーツ・ジュース、ワイ
ンなどが候補として挙げられている。また、これに加えてバッグやボールペン
などの工業製品も候補の対象にするとしている。USTRは、12月15日に
具体的な制裁内容を発表し、99年2月1日から制裁措置を発動するとしてい
る。

  これに対しEUは、既にバナナの輸入制度の改善を図っているとしており、
今回のUSTRの発表は、米・EU間の関係悪化の危険性をはらむものであると
非難している。

 ところで、牛肉業界は、今回のバナナ紛争をホルモン投与牛肉問題の試金石
になるものとして、その成り行きに重大な関心を持って注目している。

 EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置問題については、今年1月、WTOの
上級委員会が、これを不当とする裁定を下しており、EUは、99年5月まで
に何らかの対応を取ることを迫られている。

 したがって、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)や米国食肉協議会(A
MI)は、今回のUSTRの対応にいち早く歓迎の意向を示すとともに、ファ
ーム・ビューローなどの農業団体およびバナナ関連団体などと合同で、EUの
対応について非難する意見広告を各新聞に掲載することを決定した。

 広告では、EUに米国産農産物の市場を消失させることを許すな、と訴えて
おり、牛肉やバナナだけの問題ではなく、今後大豆などの他の産品にも影響が
及ぶ可能性があると指摘している。加えて、世界貿易システムの威信を守るた
めのものであるとしている。

 また、USTRは、11月19日、EUに対しバナナ制度の改善策の内容に
ついて、再度WTOパネルを招集し、その内容を評価したいとの提案を行った
が、EU側はこれを即座に拒否した。

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