EU豚飼養頭数は今後緩やかな減少局面へ−欧州−平成11年4月第383号

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EU豚飼養頭数は今後緩やかな減少局面へ



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 4月8日発】EUにおける98年12月現在の
豚総飼養頭数(暫定値)は、1億2,500万頭(対前年比+5.5%)で前年を上回
った。しかしながら、多くの加盟国において繁殖雌豚頭数が減少しており、今後よ
うやく飼養頭数は緩やかな減少局面に移るものとみられる。

 EUにおける98年12月現在の豚飼養頭数(暫定値)は次の通りである。

                (単位:千頭、%)
タイプ 97.12 98.12 前年比
繁殖雌豚 12,918 13,061 +1.1
うち未種付け豚 1,513 1,480 -2.2
ほ育豚(20s以下) 31,931 34,104 +6.8
その他の豚 74,078 78,317 +5.7
合 計 118,927 125,482  +5.5
資料:MLC「European Market Survey」


 EUの豚総飼養頭数は1億2,500万頭(前年比+5.5%)で、増加に転じた96
年から引き続き増加している。

 国別に見ると、大規模な豚コレラ(97年2月〜98年5月)が終息したオラン
ダで前年比+17.3%と大幅に増加したのをはじめ、ドイツ(同+6.0%)、スペイン
(同+11.5%)、フランス(同+2.6%)、デンマーク(同+4.3%)など主要生産国
で前年を上回っている。

 豚飼養頭数をタイプ別に見ると、ほ育豚(20s以下)で前年比+6.8%、その他の
豚で同+5.7%といずれも前年を上回っており、今後これらの出荷が行われる間、と
畜頭数の増加が見込まれる。
 
 一方、繁殖雌豚では前年比+1.1%と増加率が低く、特に未種付け豚では同-2.2%
と前年を下回っている。これは、スペイン(同+10.9%)、デンマーク(同+4.2%)、
ドイツ(同+1.6%)などを除いた加盟国で繁殖雌豚頭数が前年を下回ったためであ
る。特に他の加盟国に先駆けて繁殖雌豚のとう汰を実施したイギリスでは同−12.7
%と大幅な減少となった。また、EUにおける豚飼養頭数増加の大きな要因となっ
たオランダにおいても同−3.8%で前年を下回っている。さらに、繁殖雌豚頭数が前
年を上回っているドイツおよびデンマークにおいても99年になってから前年を1
〜3割上回るペースで繁殖雌豚のとう汰が実施されている。この結果、EUにおけ
る豚出荷頭数は99年第2四半期まで前年を上回って推移するものの、第3四半期
以降徐々に前年実績を下回って推移するものと予測されている。

 EUでは、96年および97年に豚肉価格が堅調に推移したことから、オランダ
を除く主要生産国で急速な増産が進んだ。しかしながら、急激な豚肉価格の上昇、
オランダにおける豚コレラの終息および98年8月にEU最大の輸出先であるロシ
アの経済危機などの影響により、97年後半から需給が急速に緩和し豚肉価格は低
水準で推移している。このため、EUでは豚肉需給の改善が緊急の課題となってい
る。

 EUでは、この対策として豚肉輸出補助金の引き上げ措置や豚肉民間在庫補助制
度の発動などの措置を取っている。しかしながら、需給改善の決め手になるとみら
れる飼養頭数の効果的削減が図られていなかった。

おわび

1 3月30日号第381号の「EUがデンマークと畜業者の合併を承認」の記事中、「両組合で共同経営している豚肉輸出

 会社(ESS Food)からの経営の撤退ほか。」とあるのは、「デニシュ・クラウンなどは豚肉輸出会社(ESS Food)

 の共同経営を解消する。」に訂正いたします。なお、今後は、ESS Food の経営を合併後の新組合デニシュ・クラウンが

 引き継ぐこととなります。

2 4月6日号第382号の「EU首脳会議、共通農業政策改革案に合意」の記事中、「農相理事会案では歳出削減を理由に

 2005年度からとされていた。なお、介入価格の引き下げなどは2000年から…」とあるのは、「農相理事会案では歳

 出削減を理由に2003年度からとされていた。なお、介入価格の引き下げなどは2005年から…」に訂正いたします。




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