カナダ、酪農のWTO裁定を不服として控訴を決定−米国−平成11年4月第383号

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カナダ、酪農のWTO裁定を不服として控訴を決定



【デンバー駐在員 藤野 哲也 4月8日発】米国およびニュージーランドが、カ
ナダの乳製品に対する輸出政策などはWTO(世界貿易機関)協定に合致していな
いとして提訴していた問題について、WTO紛争処理小委員会(パネル)はその改
善を求める裁定を行った。これに対してカナダ政府は、これを不服として上級委員
会に控訴する意向を明らかにした。

 カナダは、生乳供給管理制度により、基本的に国内需要に合わせた生乳の計画生
産を行っているため、乳製品の輸出は限定的である。

 乳製品の輸出は、従来、生産者からの課徴金を原資として、国際価格水準で実施
されていた。しかし、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意により、これが輸出
補助金とみなされたため廃止された。

 これを受けて、カナダ政府は、乳価分類の見直しを行い、95年8月から新たに
スペシャルクラス(クラス5)を設定した。なお、クラス5は、その用途に合わせ
て(a)〜(e)の5段階に細分されるが、主に輸出乳製品向けの生乳価格として
設定されており、乳製品の国際価格水準に見合うよう引き下げられている。
 
 米国の酪農・乳業団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)、米国乳製品輸出
協議会(USDEC)および国際乳製品協会(IDFA)は、輸出向けのクラス5
の設定は、国内消費向けの価格との二重価格制度となっており、低価格で定められ
るクラス5は輸出補助金のう回措置で、WTO協定に基づく約束に違反しているな
どとして、97年9月、米通商代表部(USTR)に対し、WTOに提訴するよう
陳情書を提出した。この結果、米国・カナダの2国間協議の後、WTOパネルが設置
されることとなった。なお、その後、ニュージーランドも米国に同調して提訴に加
わった。

 WTOパネルでは、上記の問題に加えて、カナダが飲用牛乳向けに設定した年間
64,500トンの関税割当枠の運用についても議論された。カナダは米国からの
入国に際して飲用牛乳の持ち込みを許可する一方で、飲用牛乳の輸入を制限してい
る。この点について、カナダは、米国からの旅行者や米国から戻ってくるカナダ市
民が、その割当量を満たすのに十分な飲用牛乳を購入してカナダ国内に持ち込んで
いると主張していた。
  
 WTOパネルは3月17日、輸出のみを目的として生産される乳製品向け生乳価
格を低く設定する乳価分類は、輸出補助金に当たるとの見解を示すとともに、飲用
牛乳向けの関税割当枠の執行改善を求めるとの裁定を下した。なお、最終報告書は
夏以降に発表されるものと見込まれている。

 これに対して、カナダ政府は先般、今回の裁定が輸出に対して言及されたのみで、
カナダの生乳供給管理制度自体については何ら影響がないとの見解を示した。これ
は、WTOパネルが、クラス5のうち、輸出のみに仕向けられる(d)および(e)
クラスのみを言及しただけで、国内または輸出向けに仕向けられる(a)〜(c)
については問題にならなかったことから、二重価格制度への言及がなかったことが
背景となっている。その後、カナダ政府は、WTOパネルの裁定を不服として、上
級委員会に提訴する意向を明らかにした。
 
 一方、米国は、今回のWTO裁定を歓迎するとともに、今後、カナダの飲用牛乳
の関税割当の履行により年間4千5百万ドル(54億円:1ドル=120円で換算)
程度の市場機会の拡大につながるとして期待している。
 



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