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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 7月29日発】EU委員会は、世界貿易機関 (WTO)次期ラウンドへ向けたこれまでの交渉準備の成果をEU理事会および欧 州議会への提言として取りまとめた。 本報告書の抜粋を以下に紹介する。 ヨーロッパ経済の改善、世界経済の成長・開発促進および国際化管理の重要な手 段と位置付けられる次期ラウンドのための課題を報告する。次期ラウンドは広範囲 の事項を含む包括的なラウンドとすることがWTOメンバーすべての貿易権利を考 慮するための最善の方法と考える。 包括的ラウンドにおける課題は、次の4つである。 @貿易自由化、市場アクセス改善の推進による競争相手との条件改善および実質的 なバランスの確保。この際には開発途上国への特例の継続を考慮 AWTOが国際貿易関係を管理する真の手段になるための多角的な制度の強化 B後発開発途上国育成のための特別活動を含むWTOの開発機能・能力の強化 CWTOが広範な公共的事項および健康、環境、社会的関心などの事項を引き続き 取り上げることの確保 また、個別分野(農業、サービス、投資、競争、貿易促進など)について、昨年 の各委員会における議論の成果を反映させるものとして、各分野の交渉目的はいか にあるべきかを提示する。 農業分野については、交渉に当たり次の3点を考慮することになろう。 @EUの農業政策の重要要素が立脚しているWTOの農業に関する協定(以下「農 業協定」という)の既存条項の維持、A農業協定の改善、特に域外市場のアクセス に関する改善、B農業の多面的機能を考慮した農村・環境政策との両立確保に加え、 動物愛護を含む新たな事項への対応。 @の主要事項としては、共通農業政策(CAP)改革の実行確保に不可欠である 「青の施策(ブルーボックス)」の維持、2003年以降の「平和条項」の更新、 農業協定の下での特別セーフガードの更新がある。 Aについては、農業協定第20条を反映させる必要がある。国内保護、関税割当 管理を含む市場アクセスに関する問題があり、域外国の市場参加への障害を除去す るという観点から、EUは積極的な市場アクセス政策を推進すべきである。さらに 輸出補助金、国家貿易問題もある。 Bは、同20条の「非貿易的関心事項」に該当するであろう事項である。農業の 多面的機能の維持、人間、動物、植物の生命・健康の保護、貿易と環境、動物愛護、 食品の安全性、食品の品質、そのほか農業に関する消費者の関心事項との関係が含 まれる。これらの事項は、公衆との関連が増加しており、EUの法律において重要 な位置を占めている。さらに、食料安全保障のように各国独自の重要事項があるだ ろう。 農業分野については、EU理事会は、ベルリンでの会議において、CAP改革の 決断が将来的なWTO多角的交渉に向けてのEUの交渉権限を決定する重要要素と なるだろうと考えたことも想起すべきである。
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