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【シンガポール駐在員 外山 高士 7月29日発】フィリピンでは、供給過剰に よりトウモロコシの価格が下落している。7月初旬に1s当たり5.1ペソ(1ペ ソ=3.2円)であったものが、中旬には4.3ペソに急落している。この価格は、 政府の試算している生産費6.0ペソよりも大幅に安いものとなっている。 同国の予測によると、今年のトウモロコシの生産量は、第1四半期で昨年同時期 の約2倍に当たる206万8千トン、第2四半期でも約3倍に当たる80万2千ト ンとなっており、大幅な増加が見込まれている。政府は、エル・ニーニョ現象から ラ・ニーニャ現象に移行する半年間に作付けされたトウモロコシの収量が多いこと が原因であるとみている。 また、同国ではガット・ウルグアイラウンド合意に基づき、トウモロコシの関税 を95年の100%から2004年には50%に引き下げることとしている。しか し、昨年から家畜と家きんの飼養者については低税率で輸入できる特別措置を実施 しており、その関税率は98年で20%、99年で15%、2000年で10%と なっている。また、世界的なトウモロコシ価格の下落により、輸入価格が1s当た り3.4ペソと国産の価格と比較して大幅に安いことから、多くのトウモロコシが 輸入される状況となっている。 これに対し、エストラーダ大統領は農家の収入を確保するため、最大の産地であ るミンダナオ島でのトウモロコシの買い入れを行うよう指示した。これを受けて、 農業省では、財務当局に対し買い入れに必要な資金3億ペソの調達と、買い入れた トウモロコシを保管する倉庫の手配を開始している。しかしながら、現在の緊縮財 政の中、買入資金の調達はかなり困難となっており、また倉庫についても、昨年か らの持ち越し在庫が7万トン以上もあり、ミンダナオ島の倉庫のほとんどをこれに 使用しても、収納しきれない状況となっている。また、飼料製造業者の多くが工場 を持つルソン島への輸送も、船便の数が少ないことから、順調には進んでいない。 このような産地での過剰な状況は昨年から続いており、ミンダナオ島においては、 収納しきれなかったトウモロコシ約15万トンが野ざらしとなったため、廃棄処分 されている。 このため、トウモロコシ生産農家では、政府による買い入れを条件として販売代 金を先払いする、特別資金調達制度の導入を要請し、所得の確保を望んでいる。一 方、政府は最近になって、昨年からの在庫を購入時の1s当たり6.5ペソより安 い6.1ペソで売り払うなど、今年生産されたトウモロコシの収納場所の確保に懸 命になっているものの、国内の市場価格に比べ高すぎることから売れ行きは良くな く、今後の対応に苦慮している。
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