ベルギー、畜産物ダイオキシン汚染対策を強化−欧州−平成11年8月第399号

ALIC/WEEKLY


ベルギー、畜産物ダイオキシン汚染対策を強化



【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 8月5日発】ベルギー政府は、7月23日、2
33の養豚農家のサンプルから通常の20〜50倍のPCB(ポリ塩化ビフェニー
ル)が検出されたと公表したが、うち2農家については監視下にない、汚染対象外
とされていた飼料工場で作られた飼料によるPCB・ダイオキシン汚染であった。
この飼料は3月に作られたもので、飼料の分析結果から見て汚染源はこれまでのダ
イオキシン汚染と同一であるとされている。ただし、具体的な汚染ルートは特定で
きておらず、可能性としては、飼料原料として既に問題となっている工場産の古い
油を使用した(1次汚染)か、ダイオキシンに汚染された家畜の肉または骨粉を使
用した(2次汚染)のではないかと指摘されている。

 また、7月29日、養鶏、養豚農家合わせて175農家を新たに出荷制限農家と
して追加したと発表するとともに、国内外に存在する汚染の疑いのある牛肉、豚肉、
鶏肉合わせて11万5千トンを破棄することを表明した。その費用は数十億フラン
(1ベルギーフラン=約3円)と見込まれている。

 さらに、同日、今後8月31日まで輸出用鶏肉および豚肉の全量について、PC
Bを事前検査することを表明した。これまでは、ブラックリストに載った汚染が疑
われる約1千戸の農家を除き検査無しで輸出できた。

 8月4日、EU常設獣医委員会は、このベルギーのダイオキシン問題に関し、こ
れまでの履歴に基づく証明を中止するとともに輸出用検査対象に牛肉も加えること
を決定した。また、該当家畜の飼育期間についての終期を撤廃し、1月15日以降
のものすべて(これまでは1月15日以降6月3日まで)とすることを決定した。
なお、同一家畜群の食肉に対する検査は代表検査で良しとされたが、その具体的方
法についてはベルギー政府に委ねられた。

 ベルギー政府は、これらの措置と並行して、輸入制限が続くアジア各国(日本、
韓国、中国、フィリピン、シンガポール)へ政府職員を派遣し、ベルギー産食品の
安全性に対する不信感の解消に努めるとともに輸入解禁を求める計画を明らかにし
ている。

 このように、7月下旬に判明した新たな検査結果を受けて、ベルギー政府は、対
応を次々と発表しているが、本問題の終息にはまだ時間を要するものと思われる。

 汚染の発生(1月)から原因の特定(3月)および公表(5月)までの期間が長
かったこと、さらに、汚染物質がリサイクルの環に入った可能性が問題を複雑化さ
せた。

 なお、本問題の汚染源は飼料原料中の再利用油とみられており、高濃度のPCB
を含む変圧器用油が飼料原料に混入したものと考えられている。PCBの加熱によ
りダイオキシンが生成される。したがって、今回のケースでは、ダイオキシンに汚
染された食肉はPCBを同時に含んでいることから、通常汚染の有無の判定にはま
ず簡便なPCB検査が行われている。


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