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【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 8月18日発】ブエノスアイレス市内で3 週間にわたり開催されていた当地の冬の風物詩「国際農牧工業展」(以下「農牧展」 という。)が、8月11日に閉幕した。1875年に始まり、今年で113回を数え るこの伝統行事では、家畜や家きんの品評会、国内外の農業機械などの展示が大々的 に行われ、毎年、大勢の来場者でにぎわう。主催者側の発表によれば、今年の農牧展 には、昨年を10%程度上回る約135万人が来場した。 主催者であるアルゼンチン農牧協会(SRA)は、大土地所有者を中心に約9千人 の会員から構成され、アルゼンチンの全国的な4つの農業団体の中で、伝統的に最も 政治的影響力が大きい団体である。 同国では、農家経営状況の悪化を背景に、今年に入り農業団体が2度のストライキ を実施、また、農牧展の開催前日の7月21日には、一部農業団体がブエノスアイレ ス市内で7千人規模のデモ抗議を実施するなど、政府と農業セクター間の緊張が高ま る中、今年の農牧展は開催された。 このような状況下、8月7日に行われた農牧展の公式の開会式における演説におい て、メネム大統領は、農業セクターの抱える問題に対し、今後も農業団体と話し合い を続け、双方の合意に基づく対策を探る姿勢を明らかにした。また、既に実行に移さ れている対策として、@特定の農業融資について返済期間を最高20年とする融資へ の借り換え、A差し押さえとなった担保物件の競売停止、B洪水等による被害地域に おける農家への金融支援として資産税などの支払いの延長、C道路整備における米州 開発銀行との融資合意、D農産物、林産品、かんきつ類、綿の輸送に対する高速料金 の25%の引き下げ、E乳製品に対するメルコスル域外関税の30%への引き上げ、 F国立銀行などによる穀物の作付け・収穫に対する8億ペソ(約920億円:1ペソ =115円)の融資枠の設定および3%の金利補助、G国立銀行による生産者や農業 協同組合への運転資金に対する融資の返済期間の延長、H豚のと畜税6ペソ(約69 0円)のカットを挙げた。 また、メネム大統領は、今後、政府が推し進めるべき対策案として、2つの新税の 改正(現在、国会で審議中)に加え、@穀物農家への金融支援として、業界の支援を 得た国立銀行の特別プログラムによる種子、肥料、農薬における支払いの収穫後60 日までの延長、A2000年1月1日以降における油糧種子の輸出税(現行税率3. 5%)の撤廃、Bディーゼル油に課せられる税金の撤廃などを発表した。 これら対策案の具体的な実施については、今後、議会などを通じ議論されることに なるが、Bについては経済公共事業省フェルナンデス大臣による強い反対があるなど、 結論が出るには、まだ時間がかかるものとみられている。
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