イギリスでオーガニック農業への転換が加速−欧州−平成11年8月第401号

ALIC/WEEKLY


イギリスでオーガニック農業への転換が加速



【ブラッセル駐在員 井田 俊二 8月19日発】イギリスでは、オーガニック農
業への転換を図る生産者が急増している。オーガニック農業へ転換を図っている農
地面積は、99年4月現在、27万5千ヘクタールで前年同期(5万5千ヘクター
ル)の約5倍に達している。

 急増した要因は、イギリス政府がオーガニック農業の生産振興策として、99年
4月から新たにオーガニック農業計画(OFS:Organic Farming Scheme)を開始
したためである。OFSは、オーガニック農業へ転換する生産者を対象として5年
間にわたり補助金を交付するもので、補助金単価は旧計画に比べて約2倍に増額さ
れた。さらに、予算総額も旧計画の98年度(98年4月〜99年3月)の約1百
万ポンド(約1億8千万円:1ポンド=180円)から、OFSでは99年度に6
20万ポンド(11億2千万円)、2000年度には850万ポンド(15億3千
万円)と大幅に増額された。

 このため、99年度におけるOFSへの申請者数は約500生産者(申請面積:
4万2千ヘクタール)となり、既に旧計画の98年度の年間申請者数である222
生産者(申請面積:1万3千ヘクタール)を大きく上回っている。また、申請者数
が増加した結果、OFS開始後、約4ヵ月間で今年度生産者に交付される補助金予
算は全額生産者に割り当てられることとなった。

 イギリス最大のオーガニック認証団体であるソイル・アソシエーションは、実態
を反映しない政府の予算措置を非難するとともに、こうした予算上の制約がオーガ
ニック農業へ転換する生産者の意欲に水を差すとして懸念しており、今後、政府に
対し予算の増額を求めていくものとみられる。

 イギリスにおけるオーガニック農産物の消費量は、近年急速に増加している。し
かしながら、消費量の約70%を輸入に依存しており、国内の生産体制は遅れてい
る。これは、イギリス政府がこれまでオーガニック農業の生産振興に関して積極的
でなく、他のEU加盟国と比較してオーガニック農業の生産者に対する補助水準が
低かったことが挙げられる。こうした状況を反映して、イギリスのEUにおけるオ
ーガニック農地の割合は85年の第3位から97年には第9位と大きく後退してい
る。

 オーガニック農業への転換が加速した背景の1つには、ベルギーにおける畜産物
のダイオキシン汚染問題や遺伝子組み換え農産物など食品の安全性に関する消費者
の関心の高まりがある。

 このような状況を反映して、イギリスにおけるオーガニック食品の小売段階の売
上高は、98年には前年比40%増の3億5千万ポンド(630億円)と急増した。
この傾向は今後も続き、2002年には10億ポンド(1千8百億円)で、全食料
品の7〜8%を占めるものと見込まれている。


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