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【シドニー駐在員 野村 俊夫 8月18日発】豪州統計局(ABS)が今月12 日に発表した統計によると、98/99年度(7〜6月)の牛枝肉生産量(子牛肉 含む)は、前年度比2.7%増の200万9千トンとなり、80年以降初めて2百 万トンの大台を突破した。 98/99年度の牛肉生産量については、本年3月の農業観測会議では97/9 8年度の干ばつの影響で前年度(195万5千トン)を下回ると予測されていたが、 6月にはその予測が2百万トンをやや下回る水準まで上方修正され、今回の発表に より、最終的には2百万トンを超える結果となった。 この背景としては、干ばつの終息とともに全国的に良好な牧草の生育に恵まれて、 1頭当たりの平均枝肉重量(成牛のみ)が前年度の237kgから249kgへと約 5%も増加したことが挙げられる。 生産者の肉牛保留意欲が増加して、と畜頭数が約1.6%減少したにもかかわら ず、この枝肉重量の増加により、枝肉生産量は全体に押し上げられた。 豪州の牛肉生産量は、ここ数年、穏やかな増加基調で推移している。前述の農業 観測会議でも、98/99年度から2年間は一時的に生産が伸び悩むものの、その 後は輸出の拡大を背景に、2002/03年度まで再び増加基調を続けるとの中期 見通しが発表された。 今回の統計結果により、良好な飼養環境が牛肉生産に大きな影響を及ぼしつつあ ることが明らかとなったため、7月からスタートした99/2000年度の牛肉生 産予測についても、今後、生産量の上方修正が行われる可能性が高いとみられてい る。 一方、98/99年度の牛肉生産を州別に見ると、全体の45%を占めるクイン ズランド州が前年度比12.3%の高い伸びを示したのに対し、ニューサウスウェ ールズ州(シェア23%)は2.7%の増加にとどまり、ビクトリア州(同21%) は7.4%の減少となった。昨年来、南部2州を中心に、と畜向け若齢去勢牛の供 給不足が深刻化し、パッカーの経営にも影響を及ぼしているが、今回の発表もこれ を裏付ける結果となった。 また、今月16日には、豪州家畜生産者事業団(MLA)が、米国の牛肉生産が 低下しつつある一方、ニュージーランドや南米などからの輸出は増えないため、豪 州産牛肉に対する需要が高まり、肉牛生産者価格が15%程度上昇するとの見通し を発表した。 こうした強気の見通しは、肉牛生産者の増頭意欲を高めており、本年度は肉牛保 留によって一時的に牛肉生産の伸びが鈍るものの、その後は過去数年の実績より高 い割合で増加するとみられている。
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